第10話
文字数 291文字
仙台駅、観光情報センター。島田真夢たちのパネルがかつて置かれた場所。
「置かれた事ないんだよな」
羽生結弦のパネル。罪なきそれを睨む。
「何やってんだかなあ」
JR東北新幹線。車両が揺れる度に思い出の一つ一つが抜け落ちた。忘却に抗う為に写真を撮り、リュックサックを土産物で埋めるのだろう。液晶画面に指を置けば、旅先で目にした大半の物事を呼び起こせた。
ナナセが話した事について思い出せない。
心に留めなかった訳では決してない。あまりに深い所に沈んでしまった。
大切で脆くて、可能性に満ちた箱。中には毒が入っているから開く事は出来ない。だから、時間を掛けてそれが結晶に変わるのを待った。
「置かれた事ないんだよな」
羽生結弦のパネル。罪なきそれを睨む。
「何やってんだかなあ」
JR東北新幹線。車両が揺れる度に思い出の一つ一つが抜け落ちた。忘却に抗う為に写真を撮り、リュックサックを土産物で埋めるのだろう。液晶画面に指を置けば、旅先で目にした大半の物事を呼び起こせた。
ナナセが話した事について思い出せない。
心に留めなかった訳では決してない。あまりに深い所に沈んでしまった。
大切で脆くて、可能性に満ちた箱。中には毒が入っているから開く事は出来ない。だから、時間を掛けてそれが結晶に変わるのを待った。