第6話

文字数 1,600文字

東京地下道1949■第6回
鉄は、進藤の店テーブルの上の地図をわしづかみにする。
 「それじゃ、悪い。じゃましたな。またな。進藤のおやっさん」
あわてて、故買屋、進藤は鉄に呼ぴかける。
「その地図、あずかって訃いてもいいぜ。高くは売れないだろうが、ものずきがいるかも
しれない。銃弾二箱となら、変えてもいいぜ」
 「ほう、価値のない地図と、銃弾二箱と」
 鉄は進藤仲藤をにらみつける。

「それくらいなら、こうだ。」
鉄は地図をやぷろうとする。
 「やめろ、それは・・・・。」
 鉄は、進藤の服のエリをつかんだ。
 「おっさん、悪い冗談はやめろよな。どうやらたいへんなものらしいな。この地図は」
 進藤の眼をにらみつける。
 「はっきりいいなよ。この地図は何だ。いわないと、明日からメガネをかけるのに不自由
するぜ」
 
鉄の右手に、ナイフがにぎられている。
 恐怖におぴえる進藤の目に、アメリカ軍占領軍のジープが近づくてくるのが、みえた。
「いけね、アメ公だ」
 風のすぱやさで、進藤の店から、鉄は走り去った。
 息をゼイゼイいわせながら、首を押さえた進藤は、そのジープの乗り手が、上客の保安
部のライリー大尉であることを認めた。
「ガキめ、ただじゃすまさないぞ。この進藤を甘くみるなよ。ほえずらかかせてやる」

 店の前にジープで乗りつけたライリー大尉に向い、しわがれ声で叫んだ。
「今、走りでたガキをつかまえて下さい。奴は「ナイフの鉄」です。早く、大尉」
ライリーはその声を聞くやいなや、ジーブを反転させ、鉄を追いかける。
 鉄を始め、竜のダループは、このトウキョウのアメリカ軍占領地区では、「ベビーギヤング」として特にマークされている。
 ライリーと、同乗して運転しているロバート軍曹は、各々トンプソン・ザブマシガンと、
M3グリースガンを構えた。

 進藤はあわてて、電話をかけていた。
「地図をみつけました。いえまちがいなく、あの地図です。ええ、『ナイフの鉄』とい夕
浮浪児です。今米軍のライリーが追いかけています。おそらくつかまるでしよう。ハンタ
ーの威名を持つライリーの事ですから。でも御心配なく、奴は保安部の入間ですから、
「ベビーギヤング」竜のグループのことを聞き出すことに全力をあげるでしょう。
地図ですか。いえまだ鉄が持っています。ご心配なく、奴が気づかないように地図のコピー写真をとりました。
それじゃ、お札の方はお忘れなく、例の場所で」
進藤は電話を切り、にんまりほくそ笑んだ。

 『ナイフの鉄』は、相手をまけるはずと思っていた。
なにしろ、このあたりは、鉄の庭も同然だった。
相手はジープを乗り捨てたようだ。
車でははいってこれない路地だった。路地にたむろする日本人たちが何がおこたのかと
騒ぎ見守っている。
 鉄の誤算は、相手が、「ハンター・ライリーとプッチヤー・ロパート」のペアだ、としらなかったこ
とだ。

 アメリカ保安部の「ハンターライリーとプッチヤー・ロパート」の名前を聞き、ふるえあがらない
「ベビーギヤング」や浮浪児がいれば、お目にかかりたい。
 餌食になった者、数百名。
ほとんどが殺されゐか、半死半生の目にあわされ不愚者となっていた。彼らは年少者だからとい
って容赦はしない。彼らは生まれながらのサデイストのコンビで、ちょうどいい職場を、この東洋の占領地日本トウキョウで与えられていた。

黒い影が、秘かに、おびえる鉄に近づいてくる。獲物を、ねらう肉食動物の動きを思わせる。
鉄は敵の動きを息をひそめて見守りながら、ナイフを手ににぎる。
手汗でナイフがすべりそうになる。恐怖ゆえのアドレナリンの分泌だ。

 そいつは、まるで鉄のい場所を知っているかのごとく、肉迫してくる。
影から判断して、どうやら相手はサブマシンガンを手にしている。
やばいことになったと鉄は思う。かなりベビー・ギャング狩りに慣れている奴だ。

続く090901改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

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