第4話

文字数 1,855文字

「東京地下道1949■第4回 

鉄のどす黒い顔がうなる。
「ああ、おおありだ。このグループの方針て奴だ。なんで全員が一度、竜よ。お前さんの前で獲物を、広げるなきゃならないのだ。でめえでとった獲物は、総て自分の物でいいじゃないか」

「鉄。グループの掟を忘れたのか。相互補助ってのがグループの基本のルールなんだぜ。お前、それとも忘れたのか。お前、鉄が、アメリカ保安部隊に撃たれ、熱を出し、うなっていた時、ここにいる皆にな、看病してもらったことを」

鉄の顔が赤くなり、しばらく黙って、それからまた、うなる。
「それはそれ。これはこれさ」
少し考えていう。

「力のある者が、より多くをちようだいする。これがあたり前だぜ。涙ちょうだいの平等主義なんて、、アメ公だけでたくさんだ。ゲップがでるぜ。わかったぜ。俺はなあ、この相互補助のグループを抜けさしてもらうさ」
「ああ、いい、でていけ」竜が声高におおじた。

「兄さん」
 竜の妹の恵が、兄をなだめようとした。

そして鉄に言った。
「鉄、いま、グループを離れるのね危ないわ。アメリカ保安部隊がベビーギャング狩りに力を入れているのよ。特にあなたは凶悪な部類「ウオンテッド・リスト」に載っているわ」
恵は強く言った。

「いい、鉄。考えなさい。考え直しなさい。グループには、いえ、竜兄さんにはあなたが必要なの。まして、明日の食糧車襲撃はどうするの」

鉄に悲しそうに恵に言った。
「恵、お前には世話はなっているが、これだけはどうもな。俺は、やはり、集団行動ってのが性にあわないんだ。それに俺には、この守り神があるからな」

 鉄は、愛しい子供の様に、服の袖からナイフを取り出し、刃を口びるでなでる。、ほおっておけ、恵」
 竜のきびしい声がとぶ。
「こいつにかまうんじゃない」
「でも兄さん」

「ふふ、兄妹けんかは、ほかでしてくれよ。おみやげにこのトカレフはもらっていくぜ」

 鉄は、今日の獲物「トカレフ」に再び手をのぱす。

竜の拳銃が火を吹く。鉄にあたってはいない。
「何をするんだ」
 鉄は、反射的に竜にナイフを投げようとし、一瞬思いとどまった。

「よしな。そのトカレフは、置いていくんだ」

 鉄は竜をにらんでいたが、しばらくして、ニヤリと笑う。

「わかったよ。トカレフは、竜、お前さんへの最後のプレゼントだ」           

 鉄は、アジト入口のドアを開け、荒々しくでていった。

不思議なことにカバンの事はー言もいわなかった。

隠れ家に、しばらく静寂があった。               
 「さあ、みんな気にするな、それよりカバンの中が問題だな」      
 カバンの中は書類がほとんどで、ずぶぬれたった。

ロシア語でかかれていた一片の紙片がビニール袋につつまれていた。
 もう1枚はは日本語だったが、古い文字でくづし字であった。
「どうやら地図のようだな」
 仲間の一人が言う。 

「まん中の大きな部分は、江戸城の様だな」
「金になりそうか」
「わからん。伊藤にでもみせるか」
伊藤は、古買屋で、竜たちは時々、獲物を売っているのだ。
 
その時、突然、部屋が暗闇になる。
部屋じゆうの明かりであるロウソクが、消え、突然、部屋が暗闇になる。
部屋じゆうの明かりであるロウソクが、消えている。
誰かが竜をなぐりつけた。物音がした。
皆一瞬、身動きができない。

気をとりなおした者が、ろうそくの火を再びつけた。
数本のナイフが、壁や机にささっていた。
ナイフの刃が、部屋じゆうのろうそくのしんの部分をぶち切っていたのだ。

「おい、見ろ、地図がないぞ」
「くそっ、鉄のしわざだ」       
「まだ、間に合う。おいかけよう」
「そうだ。いまなら、すぐ近くにいるはずだ」

「やめて分け」
竜がー声いった。
「なぜですか。竜さん」
「今日はもう、遅い。これ以上争いたくはない。闇やみでは不利だ。ナイフはあまり音をたてないからな。それに、明日は、大仕事がまっている。体を休めて分け」

不承不承、部下の連中はこたえる。
「そうですか。竜さんがそう分っしゃるなら」
「くそっ、鉄の奴、こんどあったら、ただじゃおかないぞ」
「おまえの腕では、鉄に殺されるのがオチだぜ。やめておけ」
「そういわれりゃ、そうだな」変に納得している。
 皆、笑った。

「よし、皆、明日にそなえて、もう寝るんだ」
 
恵は、兄の竜に言った。
「兄さん、ありがとう。鉄を追いかけないのね」
「おしい奴だぜ、あいつも」
といいいながら、竜はでかける準備をしている。

「で、それは、兄さん、今からどこへ行くの。」
「明日の現場下見だ。俺一人だけな」

(続く)
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