3.3 驚愕

文字数 885文字

知るまでは、けっこう幸せだった。
ディオ、

だ~い好きっ

こらこら、

まとわりつくな。

へへっ
『訓練』という建前(たてまえ)(もと)、楽しい時間を過ごすのが当たり前になっていた。
(メロスが成人したら、このようなこと、できなくなってしまうのだな……)
名残を惜しむかのように、ディオニスはメロスに口づけをする。
ディオ、何か、

心配なことでもあるの?

どうして

そう思ったのだ?

抱き寄せて聞く。
ぎゅっ

てしてくれたから。

『ぎゅっ』?
うん。

ぎゅっ

そう言って、メロスはディオニスに抱きついてキスをした。
おまえの語彙(ごい)はどうなっておるのだ。
と言いつつ嬉しい。
きちんと学ばなければ、

大人になった時、困ることになるぞ。

押し倒しながら言う。
ディオ
なんだ?
ボクのこと、

子供だと思ってない?

そう言ってしまうところは

十分に子供であろう。

そう言って、笑い飛ばした。
ボク、もう24歳だよ。

子供扱いしないで。

ハハハハ

24など、まだまだ子ども……

と、言いかけ、途中で気づく。
24だと?!
え?

うん。

14であろう?
ボクがそんな子供だと思ってたわけ?
……
ディオニスは固まった。

ずっとそうだと思っていた。


ディオニスの周囲にいたのは筋肉が多かった。

だから、こんな華奢(きゃしゃ)なメロスは少年だと信じて疑っていなかった。

(とっくに成人しているではないか!)
ディオニスは驚愕(きょうがく)した。
どうしたの?

ディオ。

ど……

どうもしない。

なんか変じゃない?
変ではない。

いつもと変わらないであろう。

そう?
変わらぬ。
そう言い、無理に笑みを浮かべた。
……
違和感をかんじたメロスは、ディオニスから少し離れた。
今日はもうしない?
し……
と、ディオニスが言いかけると、
……
メロスは寂しそうに微笑んでいた。
しないわけがないであろう?
そう言って、メロスを抱きしめる。
「しない」って言うのかと思ったんだけど。
しなくて良いのか?
メロスは首を振る。
したい……
おまえは笑顔でいればいいのだ。
うんっ
……
ディオニスはまずいような気がした。
ディオ……
しかし、目の前にいる愛くるしい恋人を拒むことなどできなかった。
(後で考えよう……)
さすがの暴君もそう思った。
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登場人物紹介

メロス

村から王都シラクスまで走った

ディオニス

シラクスの王

メロスの今カレ

セリヌンティウス

メロスの幼なじみ&同居人

フレイア

メロスの妹

アレクサンドロス

妹の旦那

メロスの元カレ

フィロストラトス

セリヌンティウスの弟子

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