3.7 けっこう面倒くさいよ
文字数 1,982文字
ずっとやりたかった。
それ以外の顔ができなかった。
やる前に一本取らなければならないのは、けっこう面倒くさい。
家を追い出された羊飼いとシラクスの王。
そのふたりに接点はない。初めて会った時から、ディオニスはメロスの
ディオニスはメロスを仮眠するための長椅子まで連れて行く。
そして、お互いを見つめ、流れるように口づけを交わす。
先のことなど考えなかった。
ディオニスは考えることを拒否し、したいことだけをした。
心の底から愛しいと思った相手を、ただひたすら愛した。
メロスもそれを受け入れた。
自分が望んでいることを、彼も望んでいると感じていた。
お互いに、お互いを求めていた。
◇◇◇
彼が欲した答えは、それまでの自分を否定するものだった。
けれど、目の前の誘惑を拒むことはできない。
認めたくはないし、認められない。
そんな自分に、
どうすればいいのか、わからなかった。
ディオニスの苦悩を。
メロスを手放すことなどできなかった。けれど、それは赦されないことだった。
それでもメロスの手を握りしめる。
否、苦しめて泣き叫ぶ様が見たい。
もっとあられもない姿にしたい。
その理由を、彼はまだ知らない。
知っていたかもしれないが、認めることができなかった。
そして、赦されないことを繰り返す。