第1話
文字数 1,259文字
2011年三月某日。福島県福島市の、ごくごく普通の一軒家で繰り広げられた昼下がりの一コマです。
震災というものを考えるとき、大きな被害や事故、ドラマチックな出来事に目が行きがちですが、多くの人々は、日々不安と闘いながらささやかに暮らしていました。
家庭も仕事もある、まあ現代日本ではありきたりなアラフォー女子(?)が、あの日あの時どんな会話をしていたのか? よろしかったらのぞいてみませんか?
三月にしてはいいお天気で、リビングの中はぽかぽかとした春の日差しが差し込んでいた。
庭のこぶしの花も咲き始め、小鳥たちがその花芽をついばみに遊びにやってくる。
今日は我が家に高校時代の友人二人が、子連れで遊びに来てくれた。
三人でたわいのない話をする傍らで、子どもたちが遊んでいる。
こうしていると、先日起きた巨大地震とそれに続く福島原発の水素爆発が、なかったことになるんじゃないかと思ってしまったりする。
それでも一歩外に出ればひび割れた道路や、傾いた家が目に飛び込んできて、私を泣きたい気持ちにさせるのだった。
私は立ち上がりかけたが、アッコが話始めたために、また腰を下ろしてしまう。
私? もう福島に来てから長いもん。高校から大学、就職、で、こっちで結婚でしょ? 被爆とか考えれば避難した方がいいんだろうけど、旦那だけおいて逃げても、多分私の心が折れるもん。だったら、本当に危なそうなときには家族そろって避難する。