第4話
文字数 1,415文字
つい後ろ向きになってしまう私を、アッコがまあまあとなだめてくれる。
おかげさまで。でも、お休みしてるわけじゃないの。開店休業状態。教室を開いても、生徒が来ないのよ。でもね、一人だけ一日も休まずに通ってきてくれてる生徒さんがいるのよ。家が近いっていうこともあるんだけどね。生徒さんがピアノを弾きたいという気持ちになったらいつでも戻ってこれるようにしておこうとは思ってるの。伴奏の仕事は、暫くはできないだろうと思うな。練習会場も地震で使えなくなったり避難所になってたりだし。
その後、伸びに伸びていた息子の卒園式が何とか執り行われることになったのは、四月に入ってからだった。
四月六日 〇〇幼稚園 幼稚園お遊戯室にて卒園式
同じく四月六日 〇〇小学校 幼稚園お遊戯室にて小学校入学式
この同じ日、同じ場所で、小学六年生の卒業式も執り行われた。小さなお遊戯室での小さなお式だったが、みんな新しい制服に身を包み、子どもたちの顔には笑顔があった。
止まってしまっていた子どもたちの時間が、動き始めた。
了