毎晩、死んでいる少年
文字数 1,093文字
小さい頃から一度だって、
その夢を見なかった日はない
あんたはいいわよね、
毎日そんな能天気そうな顔してて
朝の通学途中
幼馴染で同じ高校に通う舞は
顔を合わせるなり僕にそう言って来た
これは毎朝繰り返される
挨拶のようなもので
『おはよう』の代わりだ
それでなんか知らないけど、
そんなすっきりしている訳?
いいわよねぇ、
毎日いい夢見られて、
それで幸せなんだから、あんたは
高校三年生にもなって、
そんなんで毎朝幸せとか、
本当に羨ましいわよ
まぁ、小さい時からそんなだったし、
あたしは慣れてるけど
そこにはやはり、
毎日違う姿形をした
クラスメイトが座っている
どうしてこの世界の人間達は
気づいていないのだろう……
正確には、
気づいていないというより、
覚えていないと言うべきなのか
この世界の人間達は、
毎日毎日、同じ生が
ずっと続いていると思っている
僕は、いや、
この世界のすべての人間達には、
毎晩死が訪れている
実は僕はもう、このセリフを
すっかり暗記してしまっている
それを、毎晩転生させることによって、
連続性のある生命だと思わせているに過ぎません
転生した明日のあなたには
きっと祝福が待っているでしょう
そう女神に言われて僕は、
次の転生へと繋がる扉を開く
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