コードネーム『大阪のおばちゃん』
文字数 1,654文字
大阪のおばちゃん、
人は彼女のことをそう呼んでいた。
だが本当に彼女が大阪出身であるのかを
知る者は誰もいなかった。
そして彼女が日本政府所属の
秘密工作員であることなど
誰も知るはずがなかった……。
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日課であるスポーツセンター通い、
毎日午前中はそこに通うことにしているおばちゃん。
そこでおばちゃんが仲良くなった
年配女性の珠代さん、
おばちゃんよりも年配であるのだから、
おそらくは六十歳前後、
もう高齢者の域に達しようかというところか。
今日はいつものスポーツセンターの帰りに
珠代さんの家にお呼ばれしたおばちゃん。
もうそこは
『大阪のおばちゃん』と呼ばれるだけあって、
コミュニケーション能力の塊で
親しみ易く、誰の懐にも
すぐに飛び込むことを得意としている。
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大概、中年女性がそう言って早く帰ったためしがない。
女性というのは基本的には
お喋りが好きなものなのであろう。
そうやって甘やかすものだから
内容にどれだけ価値があるのか分からないお喋りが
何時間にも渡って繰り返されることになる。
それなりの世間話しが
それなりに展開された後、
しみじみとした口調で珠代さんは呟いた。
そう言いながら
おばちゃんはカバンから眼鏡を取り出して掛け、
手元にあったスマホのアプリを起動させた。
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オペレーターがそう告げるとすぐさま
指揮官の氷山冴子から指示が出る。
ここは内閣府 超高度情報戦略部 婚姻支援室、
通称BBAのオペレーションルーム。
ここでは、同様の案件が
常に多数処理されている。
少子高齢化が著しく、
このままでは人口減少による国力低下、
国家滅亡の危機感を抱いた日本政府は
国家戦略としての婚姻支援、
子づくり支援策に本格的に乗り出した。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk/da046c4ba34dcce361f5023fc92979ca.jpeg)
十数年の歳月を費やし、
超高性能自律型人工知能AI
『お見合い婆あ』を開発。
演算処理をスーパーコンピューターに負担させ、
日本人全員のパーソナルデータを食わせて、
男女の相性をマッチングするシミレーションを
長年に渡りひたすら繰り返して来た。
そしてようやく実戦の目途が立ち、
婚姻支援室『BBA』が創設されるに至る。
コードネーム『大阪のおばちゃん』は
『BBA』の秘密工作員であり、
現在、結婚相手が見つけられない男女を
極秘裏に支援するというのが彼女の任務である。
人物照合のデータを確認する氷山冴子。
当然、日本国に登録されている
大山辰夫という人物の
全データが管理されているため、
精度としてはこの上なく高い。