ボーイズサイド:潔癖症の男子

文字数 1,106文字

……
――金色の髪が

サラサラと風になびく

太陽光を反射して

キラキラして輝くその姿は

まるで女神みたいだ

白い肌は

まるで透き通るよう

そして虹彩の薄い

青い瞳

……

そんな彼女の姿を

僕は遠くから眺めることしか出来ない

校内を移動する彼女を見つけて

その姿を眺めて満足する


それが僕の学校での日課だ

こう言うと

まるでストーカーみたいだけど


そういう訳ではない

偶然校内で、彼女を発見する


そこがゲーム性があっていいんだ

まぁ、そりゃ不自然に

彼女が居る教室の前を通るルートを

選んだりすることはあるけど

断じてストーカーなどではない


と思いたい……

……

今も校内の渡り廊下で

彼女を発見出来た

今日のゲームに勝利出来たことを

喜んでいるところだ

別に、告白しようとか、

付き合いたいとか……


そんな気持ちはまったくない

潔癖症の僕は


他人と接触することに

嫌悪感がすごい

だから彼女と

手を繋いで歩くとか、

肩を寄せ合うとか……


そんなことも想像したことがない

やはり女神様は

遠くから眺めているのが一番いい

……
交錯する廊下

彼女はそのまま

真っ直ぐ進んで校舎に入るのだろう

横に居る友達とのお喋りに

夢中になっている彼女

そんなよそ見をしていたら、

危ないよ?

僕は右に曲がるつもりだから


このままでは僕と彼女は

ぶつかってしまう

僕は立ち止まって

彼女が通り過ぎるのを待つ……

彼女はまだ横に居る友達との

お喋りに夢中になっている

このまま進んでいたら

本当に彼女とぶつかっていただろう

彼女がすぐそばまで来た時、

僕は目を伏せる

こんな至近距離で

彼女を直視するのは憚られる

……
しかし、彼女達は左に曲がった

僕はそのことに

すぐには気づかなかった

そのままだったら

ちょっとぶつかるだけで

済んだだろうけど

不幸にも彼女はそこで

前を向いてしまった……

キャッ!
彼女の短い悲鳴があがる

そんな声をしているんだ……


僕は一瞬そう思ったが

それどころではないことが

起こっていた

僕の唇に

柔らかく温かいぬくもり

彼女の唇と

僕の唇が触れている……

本当にぶつかる直前で

二人して顔を動かしたので

それは甘いキスというよりは

本当に衝突事故に近い

ぶつかった唇が

じーんと痺れてひりひりする

「うっ! うわぁっ!!」

僕はびっくりして

後ろに飛び退く

彼女も驚いた顔で

固まってしまっている

……それは僕のファーストキス

しかも事故とはいえ、

毎日姿を追うぐらいに

好きな相手との

普通なら内心大喜びするのだろう

こんな恋愛漫画みたいな、

ラノベみたいな展開

…………

だけど僕は急いで

水飲み場まで飛んで行って、

唇を洗った

何度も、何度も……

口もゆすいだし、

うがいもした

しかしそれでも

ゾワゾワした感覚が残っている

……

好きな女の子と

キス出来た喜びよりも

潔癖な性癖の方が

勝ってしまったのだ、僕は……

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