超高度情報戦略部 婚姻支援室『BBA』

文字数 1,438文字

おかあさん、

なに言ってるんですか?

健康そうでよろしいじゃないですか

やっぱり人間、健康が第一ですわ

こんな健康的な子やったら、

きっとぎょうさん子供産んでくれますよ

日本も少子化や言うて

大変なことになってますし

おかさんも沢山の孫に囲まれたら、

きっと毎日楽しいに違いありませんよ

おばちゃんもそのことは十分に理解しているらしく、

母親へのフォローにも余念がない。

……まぁ、そうかもしれんね

三十歳の息子の嫁に来てくれるだけでも

ありがたいと思わないといかんね

おばちゃんの説得の甲斐あって

母親もそういうものかと思いだす。

さすが大阪のおばちゃん、

百戦錬磨の手練れだけのことはある

遠く離れたオペレーションルームの

冴子もほっと胸をなでおろす。


『おばちゃん、いい人居たら、

いつでもLINEの連絡先教えていいよ』って言われてるからな

一応LINEの連絡先教えとくな

そうは言っても、


いきなり会ったこともない女の人に、

LINEするっていうのも

気が引けるやろうから……

早々におばちゃん、お見合いの場、

セッティングしたるわ……

おかあさん、

いつ頃がよろしいですかね?

ここまでくれば

まずは一安心というところだが、

まだ油断は出来ない

鉄は熱いうちに打て、というのが

BBA秘密工作員の鉄則でもある

何事もその気になっているうちに

多少強引にでも押し切らなくてはならない

次の予定はその場で決める、

これは商談などでも原則とされている

その場でお見合いの日取りを決めて、

グイグイ話を進めるおばちゃんには


まぁ、心配は無用か……

後は日本政府ご自慢の

自律型人工知能AI『お見合い婆あ』が

導き出したマッチング率を信じるしかない……


ご苦労だったな、大阪のおばちゃん
指揮官の氷山ひやま冴子さえこ

に報告をしに来たおばちゃん。

女の子の方は、どうですか?

当然、お見合いというのは

相手あっての話ではある。

あちらの方は、

コードネーム『オバタリアン』が

担当している女性だったので


順調に話が付いている

生活レベル、家柄レベル、環境レベル、

どちらも同じく等しいレベルで、

完璧だな、全く問題はない

それにしても、

今月これで三件目か、

まさしく破竹の勢いじゃないか

最近、また

老後のことが心配になって来てね

旦那の体調もあまりよくないし、

もっと稼がないとダメだと思ってんのよ

お前達の報酬は、

カップルを一組成功させるごとに


老後の年金受取の際に

月五千円が追加給付される

十組で月五万円、

百組ともなると月五十万円ということになるな

それが一年で六百万円、

十年で六千万円、

それだけあれば十分だろ?

しつこいようだけど、

日本政府の財政が破綻したとしても、

それは必ず払ってもらえるんやろうね?

あぁ、保証しよう

カップルが成立して

夫婦となった者達には

税金として説明されるが、


からくりとしては

直接お前の口座に送金されるからな


政府の国家財源になる前に

お前達に金は送られる

いわば、お前達は

今の若者に先行投資をしているようなものだ

現役の若者が一人で

高齢者を何人も支えなくてはならない

とかなんとか


財務省やら厚生労働省から発表があるだろ?

これは、先に若者の役に立って、

それを老後に返してもらう、

そういう仕組みだし


むしろ一方的に支えられるより、

いいことなんじゃないかとあたしは思うがね

まぁ、あたしも

大阪のおばちゃんと呼ばれてぐらいやからね

お金にはうるさいですから

くれぐれも約束守ってくださいよ

そして、おばちゃんは

今日もお見合い婆あとしての任務を果たす。


日本のため、若い二人のため、

そして何より自分の老後のために……。

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