文字数 4,188文字

「ガアアアあああぁっ!!!」

!!!!!

「……っ!! コウ、貴方……」

バシュッ!!

「!」

ミナは触手によって捕らわれていた体がコウの炎の影響によって魔物の管や体が溶け、ミナの体はこの時解放された。

一方その場にいたアルギスはというと、

「ククク……、アハハハ!」

アルギスはコウの赤黒い鬼の姿を見て目を丸くし感銘を受け、コウに向かって大きく笑い声をあげた。

そしてアルギスは再度この時変異したコウに向かって、

「ククク……、そうか!そうなのか!小僧。

あの時理性を失ったクラドに噛まれ、すでにお前の体はこの傷口からうけた赤い液体の影響によって蝕まれていたのか!

……

……っクックック。

なんという、なんというお笑い草だ全く……

師弟揃って変異し適合しているとは……

アハハ!

捕らえて、捕らえてやるぞ、小僧!

上級魔族がなあ、この赤い液体を体の中に入れると下等な人間と違ってこのように!」

ズブッ!

バキバキバキバキ!!

アルギスが赤い液体を自身の体に注入した瞬間、巨大な荒々しい奇怪なモンスターへと変貌する。

そう、それはまるでその者の望んだ心の欲の塊が表わしたように、コウにとって食い押し込めるような恐ろしい姿をした一匹の魔獣の姿にアルギスは変貌した。



アルギスは半身鬼の体になったコウの姿を見て、コウに向かって、

「小僧!この触手で取り込んで飲み込んでくれるわ!覚悟しろ!ガキ!」

ビシャアー!!!

アルギスは無数の食虫植物のような触手を体から出し、コウの体を捕らえ飲み込もうとした。

「ぐっ……、ガアアア!!」

コウはその封印からといた魔の力の影響でアルギスを目の前にして意識がとぎれそうになり力に飲まれそうになった。

だがこの時コウはそんな状況になりながらも最後の力をふりしぼって全攻撃を刀に集中し、炎を刀に伝わせて迎え撃ち、アルギスの無数の触手の攻撃に最大級の炎の刃の一撃を喰らわした。

ズカーン!!!


「!?

!!!!」

「ぎゃああああ~!!」

コウの迎え撃つ全攻撃の炎の一撃がアルギスの醜い体を焼ききる!

アルギスはその炎の一撃をくらいのたうち回り、やがてアルギスの身体は徐々にその傷口からボロボロと崩れ、コウのはなった炎とともに焼け落ちようとしていた。

アルギスは自分の体を焼ききったコウの姿を見て、

「ぐうっ!……

おのれ!人間、人間ごときが!

我等魔族に歯向かい、私の体を焼ききるとは!

…………

……フッフッフ、だがどうやらお前その姿の力は上手く制御できてないらしいな……

さしずめ炎にのまれ焼け落ちるか、それとも師匠と同じ運命をたどり人を襲うか……

ククク……

コウ……

ちょうどいい生け贄の人間がそこにいるぞ。

襲え!そしてその女の肉片をひとつも残さず喰らってしまえ!!

そして喰らい、お前は……

クックックック……クク……

アッハッハッハッハ、ハハハハァー!!

ガアアアー!!!


アルギスはコウの放った炎の攻撃によって絶命し、燃え尽きた。

だがアルギスの捨て台詞で言った通り、コウの意識と身体は魔の力にのまれ抑制がききにくくなっていた。

「グウゥ……っ、

っっ!!」

コウはまだ意識が少し残っているうちに封印の印を片手で結びなおした。

だが予想以上に魔の力が強くコウの体を蝕んでいく。

コウはこの時意識が朦朧としている時にどす黒い声が頭の中で鳴り響いていた。

それは、

殺せ……

喰らえ!!

すべてを喰らいつくし破壊するのだ。

そして混乱と破壊の世界へ、お前たちは世界を作り替えるのだ。

……っ!!!

情け容赦なく次々と襲いかかる悪魔の言葉。

どす黒い邪悪な物がコウの全てを蝕んでいく。

「コウ……!コウ!」

ミナがコウに向かって名前を呼び近づこうとした。

だがコウから出ている残り火の炎が二人の行く手を阻む。

コウは仰向けになり頭を押さえ、邪悪な恐ろしい魔の力と戦っていた。

そして頭を抱え、悶えながら、

「このままでは……このままでは、

すべてをのまれ、魔族に……

先生、俺は……!!」

コウは意識朦朧の中で、クラドとの出来事の思い出の中で襲ってきたクラドは泣きながらコウの顔の頬に手をあて下を向きうつむいていた。

そしてコウの左手を噛んで傷つけてしまったコウを見て、クラドはこの時自我がなくなりそうになりつつも、最後の力をふりしぼってコウの体に転送魔法をかけた。

クラドはこの時コウに向かって涙をポロポロとおとし、コウの顔を名残惜しそうに最後の別れを言った。

そしてコウに向かってもう一度、

「……ごめんな、君を傷つけてしまって。

腑甲斐無い私で申し訳ない。

愛してる、愛してるよ、コウ……」

と言い、クラドのかけた転送魔法はクラドの師、猿豪の所に行くようワープ魔法をかけ、クラドの身体はこの時急速に魔物の身体に支配されコウの目の前で蝕まれてしまった。

そしてその後コウはクラドから噛まれた傷口が原因で数週間悶え苦しみ、一時は昏睡状態になり猿豪の家で魔の力と戦っていた。

幸い、クラドが魔族の赤い液体を飲まされ変異したばかりか毒はまだ薄かったのでこの時なんとか体を持ちこたえることができたコウだが、後一歩猿豪の封印術や毒の効果がうすくなければ、この時子供のコウの体にはかなりきつく、肉体に力が耐えられずそのまま死んでいたかもしれない。


やがてコウは何週間も苦しんだ後意識を取り戻し、そばにいて看病してくれた猿豪に向かってコウは涙ながらに猿豪に向かってこう言った。それは、

「……何もできなかった。

何もできず、クラド先生を……

……

じっちゃん、俺……、悔しいよ。

悔しすぎて、今は悔し涙と後悔でしか……


強く、強くなりたい。

強くなって今度こそ奴等を……

そしてあいつら魔族の手からを大切な者を守り、もう二度と何もかも奪われたりするもんか!」



……コウ!コウ!

コウの意識が魔と自分の意識が戦っている時、邪悪な意識にのまれそうなコウを遠くからミナがずっとコウの名前を呼び続けた。

ミナは苦しそうに邪悪な力にのまれそうで戦っているコウの姿を見て、意を決してコウの所に再度行こうとした。

容赦なく火の手が上がり行く手を阻む邪悪な炎。

だがミナはこの時コウの所に向かおうとした。

見ず知らずの自分なのに、コウに助けてもらったミナ。

自分がアルギスの人質にならなければこんな事にはならなかった思い、せめて彼の体を抱き締めて名前を呼び続け声をかけねばと思い、ミナは単身この時コウの元に向かった。

状況はこの時繰り返される。

助けてもらった側と助けられた側。

コウとクラド。

ミナとコウ……

あの時クラドが涙ながらに魔の侵食によってコウの体から手が離れた時に、この時再びミナのコウに対する力強い手がコウの体に接触しようとした。


ミナは激しくもがき苦しんでるコウに向かって炎の中コウの体を掴み、ミナは両手に火傷を負いながらもコウに向かってこう叫んだ。それは、

「コウ!コウ!

ごめん、ごめんね!

私があの時アルギスの人質になったばかりに貴方は……

お願いコウ!

戻ってきて!

貴方、もう一度、クラド先生に会いたいんでしょ!

貴方の師はまだ生きていて、魔族に心を捕らわれて今は魔族の道具にされているけど、

会って貴方は先生を魔族の手から取り戻し、そしてもう一度あの時皆で楽しんだ時間を過ごすんでしょ!

だからお願い!負けないで!

貴方が負けたら、貴方が今ここでいなくなったら、誰が魔族に捕らえられ操られた先生の心を救うの?

彼の心を救えるのは貴方しかいないのよ、コウ!

だからお願い戻って!コウ!

負けないで!負けないで!

貴方しか、先生の心を救えるのは、コウ、貴方しかいないのだから!!」

ミナは必死に魔に冒され苦しんでいるコウの体を抱き締め、コウに向かって声をひたすらかけまくった。

コウが魔の意識と戦っている中で、クラドが魔の力に飲み込まれ手放した手がその時再度時間が戻ったかのように再現された。

あの時悶え苦しみ、ただ何もできず泣くことしかできなかった幼きコウの姿。

手……

手……

クラドが転送魔法をかけ終わった後に、コウに向かってクラドがその後コウに向かって話した言葉。

「愛してる……愛してるよ、コウ。


……でも、ごめん、もう私は……」

と言い、コウの体を掴んでいたクラドの手がまるでこの時生気がぬけたかのように灰色の手に変化し、コウの体からこの時クラドは離れた。

コウはこの時濁流の意識の嵐の中、そのクラドの手を見て、

「だめだ、先生……今度は俺が助けなければ……

もう、二度と後悔したくない。

奴ら魔族の意識にのまれたくない。

先生が俺の身をていしてあの時守ってくれた命……

無駄に、無駄にしたくない。

今度は、今度は俺が……


俺があぁ!!!!」

コウは目の前の生気がなくなり灰色に変化した手を掴み最後の力をふりしぼり全力で声をあげた。

そしてその瞬間、その禍禍しい空間は激しいコウの体から出ている炎の熱風によってふきとばされ、邪悪な意思はコウの気迫によってふきとばされていった。


クラドの手を掴んだ瞬間、コウの意識の中であったとはいえ、そのクラドの表情の顔はニッコリと微笑みを浮かんだように見えた。

そしてもう一度、

「コウ……」

とその時ぽつりともう一度コウの名前を言い、邪悪な意思とともにクラドの幻影は消えた。

コウはこの時自分の意識の中で、

「必ず、必ず助けに行きますから、だから先生、それまでは……」

とコウは言い、そしてそばで一生懸命コウの名前を呼び続け手に火傷を負いながらもコウの手をずっと握り続けていたミナは、意識が戻ったコウに向かって、

「……ごめんね、コウ。おかえり」

と涙を流しながらコウに言い、そしてそのまま猿豪がかけたコウの体の封印の印は作動し続けて、まもなく夜が明けようとしていた。
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