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文字数 2,566文字
アルギスの話を聞いてあの時の場景がコウの頭の中で映像が蘇る。
コウがクラドの城で遊びに来ていた時、その時突如魔族の大軍が押し押せてきた。
この時クラドとコウに紅茶をいれに行った王妃は魔族によって襲われ、そしてその場にいたコウは魔族の人質にされ捕らわれてしまった。
コウを人質にとられ攻撃ができないクラド。
魔族は卑怯にもその身動きできないクラドの体に鋭い刃をつきつけ致命傷を与え動けなくし、そしてその時魔族が開発し作られた赤い液体を1滴残さずクラドの体に流し込んだ。
「があっ!…………!!っ」
赤い液体を飲まされその場でのたうち回るクラドの姿。
そしてその赤い液体の影響でクラドの体は凶暴な異形な姿へと変化し、穏やかで理知的な王の姿はこの時見る影もなかった。
コウはこの時の出来事で何度も後悔し己を悔いた。
そして今度こそ二度と他の人にその思いを味あわせないようにコウはこの時自分自身の中で決意を固め魔族討伐の為に足を進めたのだ。
だがそのコウの話を聞いて顔をにやかせ、不気味な笑みを浮かべるアルギス。
そして、
「そうか」
とコウに向かってたしなむように言葉を言い、そしてアルギスは、
「じゃあ師匠と同じようにあの時の状況を今度はお前にしてやろう」
とアルギスはいきなりコウに向かってその場で吼えた。
「きゃああ!」
「!?」
いきなりコウの後ろ側から悲鳴をあげ声をあげたミナ。
ミナはこの時ラーシャの体から生えた触手によって拘束され身動きがとれない状態になっていた。
「ミナ!」
「っ!!……
ラーシャ!まさか、あなた!」
ミナは身動きができないままでも後ろを振り向こうとし、ラーシャの顔をみようとした。
するとそのラーシャの姿をしていた姿がみるみると形が崩れ溶けていき、そしてその姿は醜く原型が保っていないスライム状の姿に変化した。
アルギスはその二人の驚いている姿を見て二人に向かって、
「ククク……安心しろ、小僧小娘。
その魔物はもとから所有している私の使い魔だ。
変化能力を持った魔物でな……
(元はこの赤い液体の影響で人間から偶然できた産物だが……)
本物のラーシャっていうガキはまだ生かしてる。本拠の魔物の餌としてな、ククク……
だが、動くな小僧。
動けばどうなるかわかってるな、ガキ。
この女の命はない。
少しでも妙なマネをして動いてみろ。
さすればこの女の体はこの液体で魔物と同じようになり変化をとげ醜く変異するか、それともこうやって……」
ギュウウッ!!!
「っ……!
あああぁっ!ああっ!!!!」
「ミナ!」
「っ…………!!!ああ、コウ」
「ミナ!!」
アルギスの声にこたえるように魔物はミナの体を力強く締め付ける。
コウはこの時今苦しんでいるミナの姿がまるであの時何もできず、ただクラドの前で泣き叫び助けを求めた自分と重ねあわせて、悪夢の記憶がこの時鮮明に頭の中で思い出されていた。
「っ……!ミナ!」
コウはこの時思い出された映像のせいで判断能力が鈍り一瞬体が動かなくなった。
だがアルギスはそのコウの動揺の変化を見逃さなかった。
判断能力が陥り心が動揺しているコウに向かって背後から自身の爪で攻撃し、コウはこの時アルギスの攻撃を受けて胸をつらぬかれ致命傷を負った。
コウはその隙を生んだ攻撃を受けて、
「何やってんだ、俺……」
と言いながらコウは地面に向かって倒れ、深手を負いながらミナの前で血を流し倒れた。
「コウ!!」
「…………っ!!っ」
コウはこの時大量の血を流しながら意識が朦朧とし、目の前の視界がボヤける。
アルギスはそんな血を流し倒れているコウに向かって見下した目で、
「ククク……
いくら己を鍛え体に磨きをかけても、所詮人の心は弱気物……
同じ状況を作り同じやり方で手をうてば、その者はまるで呪いがかかったように心がその場で縛られ、動くことができず動揺し隙がうまれる。
小娘、お前にしてもそうだ。
肉親の姿に化け簡単にその姿を信用し、そしてその者が異様な姿に変われば混乱し、結果、コウにとって人質の材料になった。
滑稽だ。滑稽……
なんという人間はこうも弱く脆い生き物なのだ。
だが安心しろ、コウ……
そんな感情も何もかも消え去りお前は師匠と同じように我々の道具と変わるだろう。
さあ、コウ……
お前もこちらの世界にこい。
この赤いエキスでお前も優秀な魔族の道具として働き生まれ変わるのだ。
さあ、こい、コウ。
さあ……」
アルギスは致命傷を負ったコウの首をつかみ体を持ち上げ、手に持っている赤い液体をコウの口に流し込もうとした。
コウはそんなアルギスのする行動を見て意識が途切れそうになる中、その赤い液体を見てコウはこの時ある言葉が頭の中でよぎった。
それは冒頭のはじめに老人がコウに向かって話していた言葉、
それは、
「お前に忠告しておくが、お前のその左手、くれぐれも力を開放しすぎず気をつけるんじゃよ。じゃないとお前もあれに……」
…………、
コウはこの時老人の言葉を思い出し下を向きながら言葉をつのらせ口に出した。
「……じっちゃん、ごめん。
俺……せっかくじっちゃんの忠告受けたのに。
このままだと俺、魔族に……
また何もできなかった。
何もできず目の前で苦しんでいる彼女さえもアルギスの手によってこのままじゃ……
……
……先生
クラド先生」
この時コウの心の中に、また再度クラドの姿が目に浮かぶ。
さまざまなコウと一緒にいたクラドとの表情がこの時また鮮明に思い出され、そして最後には彼が赤い液体を飲まされ変異しコウに襲いかかってきたシーンが思い出された。
コウはこの時この最後のシーンを見て、意を決し覚悟を決めたように、
「……先生、俺はっ!!!」
と叫び、
コウは意識を朦朧としながらもアルギスの前で力を解放する為の印を片手で結び、
そしてその印に反応するかのように固い鋼鉄の器具からは赤黒い炎が洩れ、コウの姿はたちまち恐ろしい赤黒い炎をあげた一匹の鬼の姿へと変貌を遂げた。
コウがクラドの城で遊びに来ていた時、その時突如魔族の大軍が押し押せてきた。
この時クラドとコウに紅茶をいれに行った王妃は魔族によって襲われ、そしてその場にいたコウは魔族の人質にされ捕らわれてしまった。
コウを人質にとられ攻撃ができないクラド。
魔族は卑怯にもその身動きできないクラドの体に鋭い刃をつきつけ致命傷を与え動けなくし、そしてその時魔族が開発し作られた赤い液体を1滴残さずクラドの体に流し込んだ。
「があっ!…………!!っ」
赤い液体を飲まされその場でのたうち回るクラドの姿。
そしてその赤い液体の影響でクラドの体は凶暴な異形な姿へと変化し、穏やかで理知的な王の姿はこの時見る影もなかった。
コウはこの時の出来事で何度も後悔し己を悔いた。
そして今度こそ二度と他の人にその思いを味あわせないようにコウはこの時自分自身の中で決意を固め魔族討伐の為に足を進めたのだ。
だがそのコウの話を聞いて顔をにやかせ、不気味な笑みを浮かべるアルギス。
そして、
「そうか」
とコウに向かってたしなむように言葉を言い、そしてアルギスは、
「じゃあ師匠と同じようにあの時の状況を今度はお前にしてやろう」
とアルギスはいきなりコウに向かってその場で吼えた。
「きゃああ!」
「!?」
いきなりコウの後ろ側から悲鳴をあげ声をあげたミナ。
ミナはこの時ラーシャの体から生えた触手によって拘束され身動きがとれない状態になっていた。
「ミナ!」
「っ!!……
ラーシャ!まさか、あなた!」
ミナは身動きができないままでも後ろを振り向こうとし、ラーシャの顔をみようとした。
するとそのラーシャの姿をしていた姿がみるみると形が崩れ溶けていき、そしてその姿は醜く原型が保っていないスライム状の姿に変化した。
アルギスはその二人の驚いている姿を見て二人に向かって、
「ククク……安心しろ、小僧小娘。
その魔物はもとから所有している私の使い魔だ。
変化能力を持った魔物でな……
(元はこの赤い液体の影響で人間から偶然できた産物だが……)
本物のラーシャっていうガキはまだ生かしてる。本拠の魔物の餌としてな、ククク……
だが、動くな小僧。
動けばどうなるかわかってるな、ガキ。
この女の命はない。
少しでも妙なマネをして動いてみろ。
さすればこの女の体はこの液体で魔物と同じようになり変化をとげ醜く変異するか、それともこうやって……」
ギュウウッ!!!
「っ……!
あああぁっ!ああっ!!!!」
「ミナ!」
「っ…………!!!ああ、コウ」
「ミナ!!」
アルギスの声にこたえるように魔物はミナの体を力強く締め付ける。
コウはこの時今苦しんでいるミナの姿がまるであの時何もできず、ただクラドの前で泣き叫び助けを求めた自分と重ねあわせて、悪夢の記憶がこの時鮮明に頭の中で思い出されていた。
「っ……!ミナ!」
コウはこの時思い出された映像のせいで判断能力が鈍り一瞬体が動かなくなった。
だがアルギスはそのコウの動揺の変化を見逃さなかった。
判断能力が陥り心が動揺しているコウに向かって背後から自身の爪で攻撃し、コウはこの時アルギスの攻撃を受けて胸をつらぬかれ致命傷を負った。
コウはその隙を生んだ攻撃を受けて、
「何やってんだ、俺……」
と言いながらコウは地面に向かって倒れ、深手を負いながらミナの前で血を流し倒れた。
「コウ!!」
「…………っ!!っ」
コウはこの時大量の血を流しながら意識が朦朧とし、目の前の視界がボヤける。
アルギスはそんな血を流し倒れているコウに向かって見下した目で、
「ククク……
いくら己を鍛え体に磨きをかけても、所詮人の心は弱気物……
同じ状況を作り同じやり方で手をうてば、その者はまるで呪いがかかったように心がその場で縛られ、動くことができず動揺し隙がうまれる。
小娘、お前にしてもそうだ。
肉親の姿に化け簡単にその姿を信用し、そしてその者が異様な姿に変われば混乱し、結果、コウにとって人質の材料になった。
滑稽だ。滑稽……
なんという人間はこうも弱く脆い生き物なのだ。
だが安心しろ、コウ……
そんな感情も何もかも消え去りお前は師匠と同じように我々の道具と変わるだろう。
さあ、コウ……
お前もこちらの世界にこい。
この赤いエキスでお前も優秀な魔族の道具として働き生まれ変わるのだ。
さあ、こい、コウ。
さあ……」
アルギスは致命傷を負ったコウの首をつかみ体を持ち上げ、手に持っている赤い液体をコウの口に流し込もうとした。
コウはそんなアルギスのする行動を見て意識が途切れそうになる中、その赤い液体を見てコウはこの時ある言葉が頭の中でよぎった。
それは冒頭のはじめに老人がコウに向かって話していた言葉、
それは、
「お前に忠告しておくが、お前のその左手、くれぐれも力を開放しすぎず気をつけるんじゃよ。じゃないとお前もあれに……」
…………、
コウはこの時老人の言葉を思い出し下を向きながら言葉をつのらせ口に出した。
「……じっちゃん、ごめん。
俺……せっかくじっちゃんの忠告受けたのに。
このままだと俺、魔族に……
また何もできなかった。
何もできず目の前で苦しんでいる彼女さえもアルギスの手によってこのままじゃ……
……
……先生
クラド先生」
この時コウの心の中に、また再度クラドの姿が目に浮かぶ。
さまざまなコウと一緒にいたクラドとの表情がこの時また鮮明に思い出され、そして最後には彼が赤い液体を飲まされ変異しコウに襲いかかってきたシーンが思い出された。
コウはこの時この最後のシーンを見て、意を決し覚悟を決めたように、
「……先生、俺はっ!!!」
と叫び、
コウは意識を朦朧としながらもアルギスの前で力を解放する為の印を片手で結び、
そしてその印に反応するかのように固い鋼鉄の器具からは赤黒い炎が洩れ、コウの姿はたちまち恐ろしい赤黒い炎をあげた一匹の鬼の姿へと変貌を遂げた。