第5話 「そういえば、私水着持ってなくて……」
文字数 1,806文字
「……ま君、ゆーま君!」
威勢のよい元気な声がする。……ああ、結衣が起こしに来たのか。うーん、朝から元気だな。
「……ああ、結衣おはよう。よく眠れたか?」
「うん!今日が楽しみすぎて、早く起きちゃった!それよりベッドありがとう。本当に良かったの?」
「いいよ、気にすんな」
昨日の夜、結衣はベッドで、俺は床で寝ることにした。結衣は「私は別に床で寝てもいいよ!」やら「一緒にベッドで寝る?」と言っていたが、近くに、それも同い年くらいの女の子と一緒に寝るなど俺が変な気を起こしそうなので別々に寝た。
「別に一緒に寝ても良かったのに。ゆーま君ばかりごめんね……今日は私が床で寝るから!」
「いや、今日も結衣がベッドで寝ろよ。俺は床でいい」
「でも……」
「いいったらいいの!俺は床で寝たい気分なの!」
そう言って俺は立ち上がって手をパチンと叩く。結衣はちょっと驚いたのか一瞬身体がビクッとさせた。……ごめん。
「さ、腹減ったろ?朝飯作るぞー!」
「あっ、待ってよ〜!」
俺が部屋から出ると結衣もちょっと走って部屋から出てきた。さて、今日の朝飯何にすっかなー。
――――――
「ねぇ、ゆーま君」
「ん?何だ?」
「ゆーま君っていつも朝ご飯作ってるの?」
「うーん。まあ、そうだな」
「えっ、毎日!?それって大変じゃない?」
「別にもう慣れたよ」
俺の親は共働きで、俺が起きる前にはもう家を出ている。母さんは「朝ご飯くらい私が作ったげる!」と言っているが、俺は朝がなんだかんだ色々慌ただしいのを知っているので、自分の朝飯くらいは自分で作るようにしている。
「それと、あの……」
結衣が茶碗を置き、箸も置いた。……何だ、いきなり改まって。何か大切な話でもすんのかな。結衣の表情が少し硬くなっている。
「あのね、今日花火大会あるじゃん」
「ああ、昨日行くって約束したよな」
「で、場所海でしょ?だから、せっかくなら海で遊びたいなって。ダメかな……?」
結衣がちょっと顔を赤らめて言う。
「海か。うん……」
「あっ、海嫌いだった……?ごめんね!今の話忘れて……」
結衣は悲しそうな顔をする。別に海は嫌いじゃない。嫌いじゃないが……。
実は最近まで悪夢ばかり見ていて、その中には" 海で溺れてもがき苦しむ"という夢があった。そんなわけで俺は今海がちょっと、怖い。
でも、せっかくなら結衣と遊びたい。そんな気持ちもある。結衣のことを知る絶好の機会でもある。うーん。どうしたものか……。
……まっ、いっか!夢は所詮夢だし。
「いや、嫌いじゃねぇよ。いいよ、遊ぼう」
「本当に!あっでも……」
明るい表情になったかと思えば、一瞬にして悲しい表情になった。本当に感情で忙しいやつだ。
「何だ?他にもなんかあんのか?」
「そういえば、私水着持ってなくて……」
「はぁ?」
おいおい、そんな大切なことを忘れんなよ……。そういえば、初めて会った時こいつ手ぶらだったような?そんな昨日のことを忘れてる俺も……。
どうすんだよ。ただ海を眺めてるだけってか?それか制服のまま泳いだりするってことか?俺だって、海で遊びたくなってきたところなのに。
うーん。……ええい!
「ごめん、やっぱこの話は……」
「おい、水着は俺が買ってやる。それでいいか?」
「えっ……?」
結衣が一瞬困惑した顔をした。目は丸くなっていて、口はポカンと開いている。
ちょっとの時間だけ沈黙が続く。すると、いきなり元気と似つかない必死な声で結衣が言う。
「そんな、それは流石に悪すぎるよ!出会ってまだ日も浅すぎるし、それに……」
「いいっていいって!」
「……本当にいいの?」
「ああ、どんどこい!」
俺は立ち上がって胸を叩いてみせる。部屋には少し鈍い音が響く。その様子を見たのか結衣の表情が柔らかくなっていく。
「そう、それなら……」
「あっ、でも」
「ん、まだ何かあんのか?」
「水着って案外高いけど……大丈夫?」
「え」
結衣のいきなりの予想外の言葉に、俺は腑抜けた声が出てしまった。高いってどんくらいだ……?夏で暑いはずなのに若干涼しく感じるのはなんでだろう。
「ん~、まあ普通は、男の子が女の子の水着を買うことってないからねぇ」
「……さっさと飯食って買いに行くぞ」
「うん!」
俺ってこんなにお人好しだったっけ?自分でも驚くくらい結衣には甘くなってしまう。なんでだろう。勢いよく茶碗の中の米を口の中に入れながらそんなことを考えた。
威勢のよい元気な声がする。……ああ、結衣が起こしに来たのか。うーん、朝から元気だな。
「……ああ、結衣おはよう。よく眠れたか?」
「うん!今日が楽しみすぎて、早く起きちゃった!それよりベッドありがとう。本当に良かったの?」
「いいよ、気にすんな」
昨日の夜、結衣はベッドで、俺は床で寝ることにした。結衣は「私は別に床で寝てもいいよ!」やら「一緒にベッドで寝る?」と言っていたが、近くに、それも同い年くらいの女の子と一緒に寝るなど俺が変な気を起こしそうなので別々に寝た。
「別に一緒に寝ても良かったのに。ゆーま君ばかりごめんね……今日は私が床で寝るから!」
「いや、今日も結衣がベッドで寝ろよ。俺は床でいい」
「でも……」
「いいったらいいの!俺は床で寝たい気分なの!」
そう言って俺は立ち上がって手をパチンと叩く。結衣はちょっと驚いたのか一瞬身体がビクッとさせた。……ごめん。
「さ、腹減ったろ?朝飯作るぞー!」
「あっ、待ってよ〜!」
俺が部屋から出ると結衣もちょっと走って部屋から出てきた。さて、今日の朝飯何にすっかなー。
――――――
「ねぇ、ゆーま君」
「ん?何だ?」
「ゆーま君っていつも朝ご飯作ってるの?」
「うーん。まあ、そうだな」
「えっ、毎日!?それって大変じゃない?」
「別にもう慣れたよ」
俺の親は共働きで、俺が起きる前にはもう家を出ている。母さんは「朝ご飯くらい私が作ったげる!」と言っているが、俺は朝がなんだかんだ色々慌ただしいのを知っているので、自分の朝飯くらいは自分で作るようにしている。
「それと、あの……」
結衣が茶碗を置き、箸も置いた。……何だ、いきなり改まって。何か大切な話でもすんのかな。結衣の表情が少し硬くなっている。
「あのね、今日花火大会あるじゃん」
「ああ、昨日行くって約束したよな」
「で、場所海でしょ?だから、せっかくなら海で遊びたいなって。ダメかな……?」
結衣がちょっと顔を赤らめて言う。
「海か。うん……」
「あっ、海嫌いだった……?ごめんね!今の話忘れて……」
結衣は悲しそうな顔をする。別に海は嫌いじゃない。嫌いじゃないが……。
実は最近まで悪夢ばかり見ていて、その中には" 海で溺れてもがき苦しむ"という夢があった。そんなわけで俺は今海がちょっと、怖い。
でも、せっかくなら結衣と遊びたい。そんな気持ちもある。結衣のことを知る絶好の機会でもある。うーん。どうしたものか……。
……まっ、いっか!夢は所詮夢だし。
「いや、嫌いじゃねぇよ。いいよ、遊ぼう」
「本当に!あっでも……」
明るい表情になったかと思えば、一瞬にして悲しい表情になった。本当に感情で忙しいやつだ。
「何だ?他にもなんかあんのか?」
「そういえば、私水着持ってなくて……」
「はぁ?」
おいおい、そんな大切なことを忘れんなよ……。そういえば、初めて会った時こいつ手ぶらだったような?そんな昨日のことを忘れてる俺も……。
どうすんだよ。ただ海を眺めてるだけってか?それか制服のまま泳いだりするってことか?俺だって、海で遊びたくなってきたところなのに。
うーん。……ええい!
「ごめん、やっぱこの話は……」
「おい、水着は俺が買ってやる。それでいいか?」
「えっ……?」
結衣が一瞬困惑した顔をした。目は丸くなっていて、口はポカンと開いている。
ちょっとの時間だけ沈黙が続く。すると、いきなり元気と似つかない必死な声で結衣が言う。
「そんな、それは流石に悪すぎるよ!出会ってまだ日も浅すぎるし、それに……」
「いいっていいって!」
「……本当にいいの?」
「ああ、どんどこい!」
俺は立ち上がって胸を叩いてみせる。部屋には少し鈍い音が響く。その様子を見たのか結衣の表情が柔らかくなっていく。
「そう、それなら……」
「あっ、でも」
「ん、まだ何かあんのか?」
「水着って案外高いけど……大丈夫?」
「え」
結衣のいきなりの予想外の言葉に、俺は腑抜けた声が出てしまった。高いってどんくらいだ……?夏で暑いはずなのに若干涼しく感じるのはなんでだろう。
「ん~、まあ普通は、男の子が女の子の水着を買うことってないからねぇ」
「……さっさと飯食って買いに行くぞ」
「うん!」
俺ってこんなにお人好しだったっけ?自分でも驚くくらい結衣には甘くなってしまう。なんでだろう。勢いよく茶碗の中の米を口の中に入れながらそんなことを考えた。