第1話 「私、幽霊だよ?」「は……?」
文字数 2,422文字
「う~ん……」
今日、俺は心地よい夢を見て懐かしさを感じている。
だって、最近は交差点でよそ見運転の車にはねられたり、俺をかばって誰かが包丁で刺されたり、海で溺れてもがき苦しむ夢ばかりをここ最近ず~~っと見ていたのでこの夢はとても嬉しい。
まあ、心地よい夢と言ってもいつもの平凡な日常を切り取ったような夢だけど。
てか、今は昨日までの最っっ悪な夢じゃなきゃどんな夢でもいい夢だと言える自信がある。
こんなことを夢の中に居ながら考えていると、優しい声で
「おーい、朝だよ~」
誰かが起こしに来てくれたらしい。夢の中であるが。
しかし、俺は起こしに来てくれた子に申し訳ないが起きられずにいた。
だって、起きてしまったらこの夢からも覚めてしまうような気がして。
まあ、夢の中だし?
無理に起きなくても?
そんなことを思いつつ、聞こえないふりをして再度寝に入っていると、
「あれ?聞こえなかったかな?もう朝になったぞー!起きろー!」
さっきの優しい声ではなくやや元気のある声で言ってくる。
うーん、もう起きるか?
まあ、でもこれはどうせ夢の中!
しかも夏休み中だし……いいやもっと寝ちゃえ!
というわけで、俺はまだ寝てるんだ!という意思表示に布団を頭まで被って寝ることにした。
この行動をしてからはしばらく無言の時間が流れた。
これはもう起こすのを諦めたな。
てか、起こされる夢、って何?悪夢とは違うけどなかなか奇妙な夢だなぁ。
次の夢に行けるかなぁ?どうせならハーレムものを……
そう思っていた瞬間、バカうるさい声で、
「こらー!何回朝、朝って言ってると思ってるの!起きろと言われたらさっさと起きる!」
突然大声で言われたものだから、つい反射的に飛び起きてしまった。夢じゃなくて現実の世界で。
「はぁ夢の中の奴に起こされるだなんて……これも一種の悪夢か?」
一人つぶやきながら、再び布団に入ろうとした。
「夢じゃないよ。てか、勝手に悪夢扱いしないでよ!」
布団の横で誰かが言う。
誰だ?
恐る恐るベットの横を覗いてみると、そこには制服を着た少女が立っている。
手を後ろで組んで俺の方に顔を向けている。その顔は少し顔を赤くしてほっぺをぷくっと膨らませていたが、だんだんどこか誇らしげで自信満々な顔に変化していく。
「も〜。そんな顔しないでよ!久しぶりでしょ?覚えてる?わたし、わたし!」
……俺にはこいつが何を言っているか分からない。
久しぶり?そもそも初対面だが?
わたし、わたしって。オレオレ詐欺の派生か?
いろいろな考えが思い浮かんでは消えていく。
考えている時の俺の顔の様子がどこかおかしかったのだろう。するとこいつは、
「ねぇ、本当にどうしたの?もしかして体調良くない!?大丈夫?ゆーま君!?」
何かを勝手に想像して慌てふためいているこいつを尻目に、俺は恐怖を感じていた。
なんでこいつ俺の名前を知っている?確かに俺の名前は勇真だが。
しかもどうやってこの家に侵入した?
いくら今日は親が旅行中で家にいないからって、女の子を家に呼んで一緒にあんなことやこんなことをするほど俺は軽いやつじゃない。
明らかに不審な奴だ。こうしちゃ居られない!早く警察に……
枕のそばにあるスマホに手をかけ、イチ、イチ、ゼロと入力を終わらせさあ、電話をかけよう!
……このまま何ごともなくかけられれば良かった。
しかし、あいつが、俺がどこかに電話しようとしているのに気づいたのか、
「あれ?どこに電話しようとしているの?もしかして……救急!?そんなに体調悪かったの!?」
「違ぇよ。救急じゃない。警察にかけるんだ」
俺は顔を振り向き強い口調で宣言する。
「警察って……何かあったの!?さっきから様子もおかしいし、かけるなら救急の方が……」
ダメだこりゃ。俺は深いため息をつく。
「いいか?まず怪しい人がいたら……お前はどこに電話をかける?」
「うーんっと。怪しい人だよね?それなら警察かなぁ?」
「んで、その怪しい奴が目の前にいたら?」
「もしもし、警察ですか?って急いで……ん?あれー?もしかして、その怪しい人って」
「お前以外に誰がいる?」
「えっ……。いやだなぁ~。私が?怪しい人?そんなまさか!」
「自覚ないんだな。どうやってこの家に入った?そもそもなんで初対面なのになんで名前を知ってんだ!どっからどう見ても怪しさの塊しかないだろ!?」
「そんな怒らないでよ……。てか、初対面って……。会ったことあるじゃん!覚えて、ないの……?」
「……ああ、覚えてない。初対面だから覚えてるはずがないよなぁ!どっかの誰かと間違えてるんじゃないか?」
「まぁ、なんにしてもお前は勝手に家に入ってきて、しかもなぜか名前を知っている気味の悪い奴だってことには変わりない。今から警察に電話する。いいよな?」
「そんな、だって、昨日の今日で、えっ……」
こいつは独り言にも似た消え入りそうな声でつぶやいた後、何かを考えているのかお喋りな姿から一変して黙りこくってしまった。
俺にとっては、抵抗してこないのだから都合がいい。今のうちに警察に……
「待った!!」
「うぉ!いきなり大声上げんなよ。」
「警察に電話したって無駄だよ。」
「はぁ?何を根拠に……」
「幽霊」
「は?」
「だから、私は幽霊。普通は誰からも見えない存在。警察に言ったって、無駄だよ」
「私は君に用があってきた。用が済んだらすぐに私を追い出してくれて構わない。だから……」
幽霊だぁ?は?何言ってんのこいつ。
そんなもん誰が信じるか。第一、幽霊ならなんで俺に見えてる?
こんな奴の言うことなんて信用できるか!関係ねぇ、今すぐ……
……
……
でも……
こいつ、俺の目を見て喋ってたな。何かやましいことがある奴には出来ないだろうな。
それに、さっきの表情。真剣そのものだった。それにちょっと声も身体震えてて……
勝手に入ってきた奴だ。俺と話してないで逃げ出すことだって……
……
俺はスマホの電源を切る。
「おい」
突然の問いかけにこいつは身体をびくっとさせる。
「お前、何者だ……?」
今日、俺は心地よい夢を見て懐かしさを感じている。
だって、最近は交差点でよそ見運転の車にはねられたり、俺をかばって誰かが包丁で刺されたり、海で溺れてもがき苦しむ夢ばかりをここ最近ず~~っと見ていたのでこの夢はとても嬉しい。
まあ、心地よい夢と言ってもいつもの平凡な日常を切り取ったような夢だけど。
てか、今は昨日までの最っっ悪な夢じゃなきゃどんな夢でもいい夢だと言える自信がある。
こんなことを夢の中に居ながら考えていると、優しい声で
「おーい、朝だよ~」
誰かが起こしに来てくれたらしい。夢の中であるが。
しかし、俺は起こしに来てくれた子に申し訳ないが起きられずにいた。
だって、起きてしまったらこの夢からも覚めてしまうような気がして。
まあ、夢の中だし?
無理に起きなくても?
そんなことを思いつつ、聞こえないふりをして再度寝に入っていると、
「あれ?聞こえなかったかな?もう朝になったぞー!起きろー!」
さっきの優しい声ではなくやや元気のある声で言ってくる。
うーん、もう起きるか?
まあ、でもこれはどうせ夢の中!
しかも夏休み中だし……いいやもっと寝ちゃえ!
というわけで、俺はまだ寝てるんだ!という意思表示に布団を頭まで被って寝ることにした。
この行動をしてからはしばらく無言の時間が流れた。
これはもう起こすのを諦めたな。
てか、起こされる夢、って何?悪夢とは違うけどなかなか奇妙な夢だなぁ。
次の夢に行けるかなぁ?どうせならハーレムものを……
そう思っていた瞬間、バカうるさい声で、
「こらー!何回朝、朝って言ってると思ってるの!起きろと言われたらさっさと起きる!」
突然大声で言われたものだから、つい反射的に飛び起きてしまった。夢じゃなくて現実の世界で。
「はぁ夢の中の奴に起こされるだなんて……これも一種の悪夢か?」
一人つぶやきながら、再び布団に入ろうとした。
「夢じゃないよ。てか、勝手に悪夢扱いしないでよ!」
布団の横で誰かが言う。
誰だ?
恐る恐るベットの横を覗いてみると、そこには制服を着た少女が立っている。
手を後ろで組んで俺の方に顔を向けている。その顔は少し顔を赤くしてほっぺをぷくっと膨らませていたが、だんだんどこか誇らしげで自信満々な顔に変化していく。
「も〜。そんな顔しないでよ!久しぶりでしょ?覚えてる?わたし、わたし!」
……俺にはこいつが何を言っているか分からない。
久しぶり?そもそも初対面だが?
わたし、わたしって。オレオレ詐欺の派生か?
いろいろな考えが思い浮かんでは消えていく。
考えている時の俺の顔の様子がどこかおかしかったのだろう。するとこいつは、
「ねぇ、本当にどうしたの?もしかして体調良くない!?大丈夫?ゆーま君!?」
何かを勝手に想像して慌てふためいているこいつを尻目に、俺は恐怖を感じていた。
なんでこいつ俺の名前を知っている?確かに俺の名前は勇真だが。
しかもどうやってこの家に侵入した?
いくら今日は親が旅行中で家にいないからって、女の子を家に呼んで一緒にあんなことやこんなことをするほど俺は軽いやつじゃない。
明らかに不審な奴だ。こうしちゃ居られない!早く警察に……
枕のそばにあるスマホに手をかけ、イチ、イチ、ゼロと入力を終わらせさあ、電話をかけよう!
……このまま何ごともなくかけられれば良かった。
しかし、あいつが、俺がどこかに電話しようとしているのに気づいたのか、
「あれ?どこに電話しようとしているの?もしかして……救急!?そんなに体調悪かったの!?」
「違ぇよ。救急じゃない。警察にかけるんだ」
俺は顔を振り向き強い口調で宣言する。
「警察って……何かあったの!?さっきから様子もおかしいし、かけるなら救急の方が……」
ダメだこりゃ。俺は深いため息をつく。
「いいか?まず怪しい人がいたら……お前はどこに電話をかける?」
「うーんっと。怪しい人だよね?それなら警察かなぁ?」
「んで、その怪しい奴が目の前にいたら?」
「もしもし、警察ですか?って急いで……ん?あれー?もしかして、その怪しい人って」
「お前以外に誰がいる?」
「えっ……。いやだなぁ~。私が?怪しい人?そんなまさか!」
「自覚ないんだな。どうやってこの家に入った?そもそもなんで初対面なのになんで名前を知ってんだ!どっからどう見ても怪しさの塊しかないだろ!?」
「そんな怒らないでよ……。てか、初対面って……。会ったことあるじゃん!覚えて、ないの……?」
「……ああ、覚えてない。初対面だから覚えてるはずがないよなぁ!どっかの誰かと間違えてるんじゃないか?」
「まぁ、なんにしてもお前は勝手に家に入ってきて、しかもなぜか名前を知っている気味の悪い奴だってことには変わりない。今から警察に電話する。いいよな?」
「そんな、だって、昨日の今日で、えっ……」
こいつは独り言にも似た消え入りそうな声でつぶやいた後、何かを考えているのかお喋りな姿から一変して黙りこくってしまった。
俺にとっては、抵抗してこないのだから都合がいい。今のうちに警察に……
「待った!!」
「うぉ!いきなり大声上げんなよ。」
「警察に電話したって無駄だよ。」
「はぁ?何を根拠に……」
「幽霊」
「は?」
「だから、私は幽霊。普通は誰からも見えない存在。警察に言ったって、無駄だよ」
「私は君に用があってきた。用が済んだらすぐに私を追い出してくれて構わない。だから……」
幽霊だぁ?は?何言ってんのこいつ。
そんなもん誰が信じるか。第一、幽霊ならなんで俺に見えてる?
こんな奴の言うことなんて信用できるか!関係ねぇ、今すぐ……
……
……
でも……
こいつ、俺の目を見て喋ってたな。何かやましいことがある奴には出来ないだろうな。
それに、さっきの表情。真剣そのものだった。それにちょっと声も身体震えてて……
勝手に入ってきた奴だ。俺と話してないで逃げ出すことだって……
……
俺はスマホの電源を切る。
「おい」
突然の問いかけにこいつは身体をびくっとさせる。
「お前、何者だ……?」