封建社会

文字数 7,844文字

 バタン
 後ろから戸を大きく開ける音がした。廊下の光が薄暗い部屋に入ってきて、私の足元を照らした。私の陰がボンヤリと畳みに映し出される。戸から入ってきた空気がタバコくさい部屋の空気を一気に薄めた。さっきまで足りなかった酸素が頭に巡ってきた。「誰が開けた?」より「やばい!」が先にひらめいた。下を見るとフジタニが大きなトラが寝返りをうつように、のっそりと動き、当たり前のように目を開けた。最悪なことに、開けた目は、私の目と合った。人食いトラが起き上がった。トラは胡坐をかいて座り込む。どしりとしてとても重量がありそうだった。私は口を開いて何かを言おうとしたが、言葉はまるっきり出てこなくて、ただ、体が釘で打ちつけられたみたいに固まった。敵意と殺意しかないフジタニの目、私は怖くて息を呑むしか出来なかった。何だか体の中まで見透かされたようで、酷く落ち着かなく、棘のある緊張感がいっぱいで、今にも吐きそうになった。
 「おい、どうするつもりや!そいつを逃がすんか!家長であるわいが寝ている間に勝手なことをさらそうとしたんか!おい!言うてみい!」
 「うあああ、ごめんなさい。」
 「なんで謝るんや!そうか、悪いことしとる自覚があるんやな!なら、なんでおまえが悪いんかいうてみい!」
 バン
 フジタニが大きな手で畳を両手で叩いた。命令後の大きな音は意味が無いけど、効果はある。大きな音で脅す原始的で幼稚な行動をばかげていると思ったが、そのばかげている行動には、理屈の無い恐怖による支配という理不尽さを成り立たせる効果が十分に備わっていた。空気の振動は効果が抜群で、ばかばかしい思いも強くあったが、それはすぐに小さく、なりを潜め、代わりに「なんとか期待に沿う答えを出そう」という前向きと言うか、絶望に対する志願的な思いが、いけないことだと分かっているが、一気に強くなった。つまり暴力に自ら屈しようとしているのだ。
 「・・私が間違っていました。」
 「そんなことはわかっとる!何を間違っとったんや!それを言え!」
胸を突き刺すような声、私は答えに窮する。私は何にも間違ってない。でも、何か言わなくてはならない。期待に沿うようなことを言ってやり過ごさなくてはならない。
 「・・私は、何にもしてきませんでした。何も決めないで、中立の立場にしかいませんでした。一生懸命に何かをしてきたこともありません。中途半端だったのです。それに気が付いていませんでした。」
 「おう、なんや、少しは分かってきたみたいやなあ。でも、ホンマにおまえが考えて言うとるんか?誰かが言うたの、そのまま言うとるんやないんか!真面目に考えろ!おい、おまえ!家長制度をなめんな!」
 バン!
 はじめはゆっくりと、それから語気を荒く、最後には畳を叩き大きな音を立てた。お母さんに言われたままを言ってとりあえずやり過ごそうかとして、穏やかな話し初めを聞いて、作戦が成功するかに見えたが、牙を剥いた大きなトラは爪を立て、さっきより恐ろしく詰め寄ってきた。でも言っている意味も不明で、私にどうしろと言うんだろう?もうこんなの、嫌だ。意味が分からない。何だか、泣きたくなってきた。私は何にも悪くないのに、一方的に大声で言われて、精神的に追い込まれて、どうしろと言うんだろう。言葉なんかもう出ない。出るのは辛く悲しい涙だけだ。
 「フジタニさん、私の方から紗江子に言い聞かせますから、もうこのあたりで許してやってください。本当に申し訳ございません。」
 私の後ろ、廊下の光が差し込む方から声が聞こえた。お母さんだった。私は何だか助けられたような気がした。私はそれに気が緩み、一気に「おかあさん」といいながら泣いて、お母さんに駆け寄った。
 「泣きたい時は泣けばいいの。でも、紗江子も少しは気が付いたでしょ。お母さん、嬉しかったよ。あなたはいい子よ。本当にいい子よ。」
 お母さんは、自分より大きな私をすっぽり抱きかかえてくれた。私は本当に安心して、泣きじゃくり、お母さんにしがみついた。しがみついたら恐怖が無くなり、泣いたら、ごちゃごちゃした考えが流れていった。よく分からないが、何かが捲れた気がした。それは、心細くなって、もったいないような感じだったが、捲れ出すと、軽くなり、しかし、確実に何かに頼ろうとしていることは感じた。冬に風呂場で裸になれば、お風呂に入る必要が有る。そんな分かりきった事実を飲み込んだような感じだった。お風呂に入れば暖かさで後のことは考えなくなる。直前まである寒さと言う不快は一切なくなる。悩みから開放される。すると、不思議なことに、一時的に逃げ込んだ場所こそが、正しい場所と思えてくる。さっきまでお母さんのいうことに不信感しかなかったけど、今はどうだろう。絶対的な安心感に満ちている。ここが正しい場所に思えてくる。私はそんなに単純なのだろうか?
 「おう、幸江、あんまり紗江子を甘やかせるなよ。いったんは分かったような顔をするが、すぐに元に戻ってしまうぞ。長年の教育は根付くんや。こいつがいらんことを教えたり、日教組の連中が学校で変なことを吹き込んで、こうなってしまっとるんや。それは根深い問題なんや。わかるか?まあええ、とりあえず、下がれ。風呂と寝る用意しとけ。」
 「はい、すぐに取り掛かります。さあ、紗江子、フジタニさんに謝りなさい。」
 「・・・勝手なことをして、ごめんなさい。」
 なぜだか、謝ると安心した。謝るところなんて一つもないのに、謝ることが当然な気がした。お化けに追っかけられる夢をみているときに、必死で「ごめんなさい」を連呼するのに似ている。でも、それしか方法がないと思う。「郷に入っては郷に従え」あんまり好きな言葉じゃないけど、自分の力でどうしようもない時は、謝るしかないと痛感した。この家では家長が絶対的になってしまっているのだ。
 「ほんまにわかっとんのかー。」
 急にフジタニがニヤついた。その笑顔に、信じられないことだが、私は、なんだか、ほっとして、どういうわけか、意味が分からないのだが、うれしくなってしまった。わたしもつられて、照れ笑いを少し浮かべてしまい、それが、とても恥ずかしくて、下を向いてしまった。下を向いた瞬間、いきなりのことで、何が起きたか分からなかったが、体に異変を感じた。何かに掴まれた感じがした。えっ?と思い、目を開くと、俯いた目の先、私の胸元に、大きな手が伸びて、私の胸を鷲掴みしていた。はじめは自分の体に起こっていることなのに、何のことだか判らなくて、頭の中が氷のように固まってしまったが、体は反射神経で、接触されたことを驚き、上半身は自然に仰け反った。一連の行動が済んだ後、私は自分がされたことを理解し、恥ずかしさ、屈辱感、恐ろしさ、必要以上に感じたフジタニの手の平の感触に軽いパニックを起こした。といっても、俯いて照れ笑いしたまま、表情を引きつらせ、体をよじって熊のような大きな手から胸を逃がしただけのことだったが、その行動は傍から見れば、感じている女に見えないこともなく、まんざらでもないように見えるかもしれない。私はそれがお父さんとお母さんの目の前で行われたことに、また、女として体が感じているように見えるかもしれないことに対して、恥ずかしくて、真っ赤になってしまった。まともに顔を上げることも出来ないぐらい恥辱感でいっぱいになった。自分は欲情なんてしていないなんて言い訳を考えても、それがここで言ってもしかたないことのように思われるし、なにしろ、胸を触られたのは事実だ。もし嫌なら、はっきりと「止めてください。」とでもいえばよかったのだが、顔を赤くして下を向いたのだ。三十路を超えて、二十歳そこらの女の子のように、照れたのだ。
 「おお、紗江子、おまえ、可愛いところあるじゃないか?ああ?」
 フジタニが調子に乗って鼻の下を伸ばして勘違いしている。ああ、なんて嫌な生き物なのだろう!こいつは大きなムカデだ。人間のフリをした毒虫だ。そんな毒虫が私に対して欲情している。全身を嘗め回すような、蛇のような目つきで私の体を余すことなく見ている。ぞっとする、気持ち悪い、でも、そのヒリヒリと張り付く生暖かい緊張感は、私の体の奥の方で確かに反応していた。考えたくもないが、頭でなく、体が、信じられないことだが、この恐ろしい毒虫を受け入れる準備をしていた。このまま毒にやられてしまうのか?
 「夜は長いんや。紗江子、わいは布団でまっとるぞ、はははははは!」
 ムカデが首筋をザワザワと這っているかと思うくらいの、それこそ虫唾が走る嫌らしい笑いが、私の首筋を駆け上がり、耳の中にわらわらと入ってきた。このむずむずした嫌な感じに体が拒否反応を示したのか、毒に対しての抵抗力が湧き出てきた。さっきまで、体の奥でジンジンしていたものが、なりを潜め、代わりに冷たい情熱、血まみれで生きるか死ぬかの修行をする山に篭った禅僧の意識のようなものが支配し、その強い精神力が肉欲的なものを退治しはじめた。その冷たさに私はうっとりとし、顔を上げ、冷静な顔色を取り戻し、やや反抗的な目で、フジタニを見ることが出来た。
 「なんや、冗談がすぎたようやのう。ツマラン顔し腐って!まあええ、わいが家長ということは分かりはじめたみたいやから、良しとしたる。」
興が冷めたようにフジタニは落ち着き、欲情にニヤ付く嫌な顔から殺気と敵意に満ちた嫌な顔に戻った。どっちにしても本当に嫌な顔だ。
お母さんは風呂に湯を入れ、二階の元は夫婦の寝室である四畳半の和室にフジタニのために布団を敷いた。はじめは一階の床の間とテレビのある和室にフジタニの布団を敷いていたが、風通しが悪い、家長がその家族より下で寝ることは許されないという勝手な理由で、お父さんとお母さんはいつも寝る部屋を追い出された。隣の部屋は私の砦だ。胸を掴まれて、「布団でまっとる」なんて言われて、隣の部屋で寝ることになるなんて、今までそういう対象として考えてなかったから平気だったが、よく考えてみれば男と女、私はトラの檻の隣に住むうさぎになってしまった。ドアには簡易的な鍵は付いていたけど、決定的なのは私の部屋と親の部屋はベランダでつながっているというリスクだ。忘れそうになっていたが、この家で過去にあんなことがあった構造なのだ。また私は害を被ることになるのだろうか?フジタニやお父さんは放っておいて、すぐに二階に上がり、部屋に入ると、ベランダに繋がる窓の鍵を閉め、カーテンを閉めた。そのカーテンの前に重いタンスとテレビを移した。いつもなら一人で持てる重さじゃないけど、こういうときは不思議と瞬時に力が湧いてくる。窓はタンスとテレビにふさがれ、明るくなっても部屋は薄暗いままになるだろう。でも、身の安全のためなら日照権なんて簡単に放棄できる。ようやく落ち着いてベットに座り込んだ。落ち着くとさっき起こったことが頭の中で繰り返される。恐ろしいフジタニの目、怒号、鷲掴みされた胸、すすり泣くお父さん、泣き崩れるお母さん。この家で何が起こっているのだろう?私たちは何にも悪いことはしていないのに。これはつまり、侵略なのだろうか?家長家と言う得体の知れない侵略者が、圧倒的な暴力で支配していく。お母さんは陥落、お父さんも手も足も出ない。私だって、陥落寸前でどうしようもない状況にある。追い詰められて、頼みの綱の警察だって助けてくれない。このまま家長家の支配されるに任せるしか方法がないのだろうか?支配されたら、たぶん、私は好きなことが出来なくなってしまうような気がする。フジタニの監視下に置かれ、着る物にチェックが入り、ファッションに規制がかかり、友達と飲みに出かけても朝帰りは許されない。そもそも女子会禁止、男と会うのなんてもってのほか。携帯電話も取り上げられ、パソコンも没収。自由はなくなり、家長であるフジタニのために生きることを強要される。私は家の奴隷になるのだ。考えただけでもゾッとする。常時、頭の中心に暴力的、理不尽で嫌な支配を気にし続けるなんて、そんなの死んだほうがマシだ。そもそも家長制度ってなんだろう?パソコンとか使える間に調べておこう。ノートを立ち上げ、私のブログを開かず(誰も見てくれないから当分更新してない)、検索で「家長制度」と入れてみる。瞬時にいろいろでてくるが、ここはウィキペディアから開いておこう。
「家長(かちょう)とは、一家の家督を継承して家族を統括し、その祭祀を主宰する者を指す。当主と同義の言葉とされている。家長は夫権や親権を通じた配偶者及び直系卑属に対する支配は勿論のこと、それ以外の親族に対しても道徳的な関係を有し、彼らに対する保護義務とともに家長の意向に反したものに対する者を義絶する権限を有していた。また、その家の家風・祭祀に関する権限を握る存在でもあった。副次的役割としては家産の管理・家業の経営などを主導する役目を担っていたが、家産・家業などは家長の占有物ではなく、その「家」に属するものであった。鎌倉時代の武家において、家長は器量によって定められる事が多く、家督は分割できないものの、所領などの家産の分割は可能であった。ところが、鎌倉時代後期以後、家産も家督ととも長子単独相続が行われるようになり、家長の権限も長子あるいは嫡子本位にて決定され、系譜・祭具・墳墓などの継承権も有するようになった。明治以後の家長はこうした武家の家長制度を強化する形で民法の「戸主」の概念によって法制化された。民法の家制度の元では家長は強大な戸主権を有しており、一家内部における強大な権力を有していた。昭和戦後期の民法改正によって家制度・戸主は廃止され、家長の権限は大きく低下することになった・・。」
読んでいてもピンと来ない内容だったが、つまり、封建社会の頃の家庭のあり方みたいなものだろう。人を家という制度によって、統制していたって事だと思う。つまり、家長が絶対で、家族は従事者という扱いなのだろうか?武家社会より、明治の社会ではそれが強化されたってところはどうかと思う。戸主の概念が民法で強化されたなんて、ちょっと怖い。ただ、戦後にはこの家制度が廃止されている。つまり、近代では家長は無くなったのだ。何故無くなったのかよく分からないけど、たぶん、戦争に負けたからだ。アメリカにとっても家長制度なんて、まんま帝国主義っぽくて、神風特攻隊なんかが生まれる厄介な思想の基に見えたんだ。たぶんそうだ。アメリカ、そして自由な国際社会に、家制度なんて、理解できない代物に見えたんだと思われたんだろう。これは時代錯誤も甚だしい間違った考え方なんだ。こんなの、この家にはいらない。私はそんなの嫌だ。誰かに支配されるなんて考えたくも無い。私は自由だ。今の世の中、自由な社会には権力より権利が必要なのだ。お父さんもよく言ってた。「我々には権利がある」って。自由の権利があるのに、誰かに従う必要があるのだろうか?支配なんて権利の侵害だ。縛られたり、拘束されたり、この家では権利が無くなってきている。暴力による支配を止めなくてはならない。これは自由社会を守るための戦いになる。今こそ、誰かがどうにかしないといけない。この事実を世の中に広め、世の中全体で、この戦いに勝ってもらわないといけない。そうしないと、この家は自由になれない。私たちは助からないのだ。誰かが私たち一家を助ける必要が有る。それなのに、なんで誰も助けに来ないんだろう?
ガチャ、ただいまかえりましたー
一階から声が聞こえた。時計を見ると十時前だった。今日は帰りが早かったのだ。お兄ちゃんが帰ってきた。それにしても「ただいま帰りました。」って声を上げるなんてどういう風の吹き回しなのだろう。これまでだったら家に帰っても、何にも言わない、朝起きても何にも言わない。言うとしたら「いける。」「まずい。」とか食卓でのご飯の評価ぐらいのお兄ちゃんが帰宅の挨拶を大きな声を出して、あんなに丁寧にしている。もしかして、家長家の影響だろうか。正直気味が悪い。いや、それ以上に気になるのは、お母さんも取り込まれ、お兄ちゃんまで取り込まれたのだろうか?だとしたら、いつどうやって、そんなことになったのだろう?帰宅がこんなに早いのも不思議だ。いつもなら午前二時ぐらいに黙って帰って、私が起きる頃には家を出ている。仕事は携帯電話なんかに使う制御素材の開発というよく分からないことをしているみたいだけど、下請けみたいで、給料も時間のわりにもらっていないとお母さんが言っていた。でもお父さんの給料より多いらしい。家に結構入れているみたいで、無職状態の私はお兄ちゃんに養ってもらっているという部分もあるらしい。それにこの家のローンの返済や、自動車の支払いもお兄ちゃんが受け持っているってお母さんが言ってた。お父さんは、それが少し面白くないらしく、「そんなに働き尽くめじゃあ、生きている値打ちがないぞ。もっと自由にしたらどうだ。」って小言をいうことが度々あるけど、お兄ちゃんはそれをまるっきり無視してる。っていうよりお兄ちゃんは小さな会社で機械技師をしているお父さんを見下しているところがある。そういうところ、私は嫌いだけど、いいところもある。お兄ちゃんは人の文句を言わない。お父さんは人の文句ばかり言っている部分が嫌なところ。もしお父さんのように平等に人の話を聞いて、お兄ちゃんのように人の文句を言わない人が目の前に現れたら私の理想の人になると思う。それで、私はいつも年上の妻子持ち人に惹かれるのだろう。じっと人の話を聞いて、人の文句なんて言わない人が多い。年齢を重ねたから落ち着いているのかもしれない。でも、本当はただ、奥さんや子供から色々言われ、我慢することに慣れているだけなのかもしれない。どちらにしろ、私にとっていい環境をもたらしてくれるのは、そういった年上の人が多かった。だから結婚できないのだろう。まあ、もし、結婚を迫られても、お父さんとさほど年齢が変わらない人と結婚は考えられない。ここまでまっておじさんと結婚?そんなの恥ずかしい。まあ、私が今三十代だったら、相手も三十代じゃなきゃ、嫌だ。もちろん、二十代でもいいけど、それならイケメンがいい。どっちにしろ、相手は私の言うことを全部聞く人。亭主関白なんてまっぴらごめん。
都合のいい妄想に逃げ込んでいると、戸を叩く音で我に帰った。びっくりして裏返った声で「はあい」と返事すると「紗江子、ちょっと入っていいか?」とドアの向こうからくぐもった声。お兄ちゃんだった。「開けるぞ。」の声で鍵をガチャリと動かすと何時もの様に勝手に鍵のノブが上がった。音もなく当たり前のようにドアが開いた。
「ちょっと、フジタニには鍵の開け方教えないでよ。」
小さな声で私が言うと、お兄ちゃんは笑って
「大丈夫だよ。フジタニさんがおまえのことをそういう風に思っているわけがないじゃないか。変な心配するなよ。」
 私はお兄ちゃん、いや、兄の言葉に違和感を覚えた。いつの間にか兄はフジタニに洗脳支配されたのだろうか?それに湿った石のように口を閉ざした何時ものお兄ちゃんでなかった。乾いた砂に吹き付ける風のようにサラサラと言葉が自然に流れている。
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