第5話 迫りくる鳴海刑事

文字数 539文字

「親父さん、また来ましたよ」
 ふてぶてしい態度でいつものこげ茶色のモッズコートを着た鳴海刑事がスーパーマーケットに訪れた。
「今度は何御用件で?」
 親父さんはあからさまにいやそうな態度で聞いた。
「確かここに若い女性が働いていましたよね」
 ハット帽を取り尋ねた。
「ああ、春名ちゃんのことか」
 面倒くさそうに答える。よっぽど刑事が嫌いなようだ。
「彼女いるかな」
 店内を見回す鳴海。
「いねえよ。もうとっくに辞めたわ」
 適当に親父さんが咄嗟の嘘で繕った。
「他を当たってくれ」
 鳴海刑事は店内の奥まで入って行った。
「そうですか。彼氏の航君とは親しいですか?西山航くんとは」
 何かを知っているような素振りで眼光鋭く親父さんを見つめた。
「ああ、親しいけど居場所は知らんで。早く帰ってくれ。商売あがったりや」
「はい。はい。また来ます」
「もう、二度と来んといてくれ。商売の邪魔や。邪魔」 
 
 奥さんはずっと親父さんの横でその会話を不安そうに聞き耳を立てていた。
「なんか嫌な予感がするよねぇ」
 悲しげな表情で親父さんに言った。
「ああ。そうみたいやなぁ。なにか助けてあげられたらええんやけど」
 娘同然の春奈の事を思うと二人は心を痛めた。
「大丈夫や。航君が何とかするはずや」
「そうやな。何とかしてくれる」
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登場人物紹介

西山航。主人公。サラリーマン。

内縁の妻の桜見春奈。

田崎浩一。警察官。航の幼馴染で親友。

スーパーマーケット井田の親父。井田正人。

スーパーマーケット井田の奥さん。井田優子。

平野誠。暴力団、渡辺組の組員。

刑事の鳴海。

山本組の向井悟。

山本組の組長の山本。少し謎の人物。

渡辺組組長の渡辺。

渡辺組の近藤。

坂口。山本組の組員。山本の部下。

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