第4話 親子のように

文字数 576文字

「春奈ちゃん、気になるのはわかるけどずっと見てたらまずいでぇ」
 親父さんは山本組事務所をチラチラ見ている春奈を気遣った。
「なぜだか気になるの」
 仕事中も春奈は組員らしい人が頻繁に出入りしているのを気にしていた。
「気にしたらあかん。見てたら銃で撃たれるで。はっはっは。彼らもよくうちで買い物してくれるから良いお客さんなんだけどなぁ。うん。それより航君とは上手くいってるん?」
「そんなことを聞いたらあかんやんか。上手くいってるに決まってるやん。ねえ」
 奥さんが間髪入れずにデリカシーのかけらもない親父さんを責めた。
「上手くいってます」
 満面の笑みで答えた。
 その幸せそうな姿を見て夫婦はとても安心し喜んだ。
 それでもどこかすこし影がある、もよりのない春奈をとても心配していた。意欲的に働く春奈ではあるが過去に何か大変な目にあったのだろうと想像はしていた。
 今では子供がいない二人にとって娘が出来たと店の近くに部屋まで用意してとてもよく面倒を見ていた。溺愛しているといっていい。
 春奈も二人が大好きだ。まるで本当の親のように接していた。

 でも俺は時々、春奈が何を考えているのかわからない時がある。

 それを問い詰めればガタガタと何かが崩れていくような気がしていた。

 それはもろさなのか、それとも自分に自信のない心の弱さなのか。

 ......今はこのままでいい。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

西山航。主人公。サラリーマン。

内縁の妻の桜見春奈。

田崎浩一。警察官。航の幼馴染で親友。

スーパーマーケット井田の親父。井田正人。

スーパーマーケット井田の奥さん。井田優子。

平野誠。暴力団、渡辺組の組員。

刑事の鳴海。

山本組の向井悟。

山本組の組長の山本。少し謎の人物。

渡辺組組長の渡辺。

渡辺組の近藤。

坂口。山本組の組員。山本の部下。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み