第4話
文字数 631文字
春雄は一瞬息がとまった。
――もしかしたら、今の紅茶に
だが、何ともなく数秒が過ぎた。
「い、院長先生。この配置換えのことは秋子さんに話しているのですか」
「いや、まだだけど」
春雄はほっとして、しかし強く言い放った。「そ、それはやめてください。できれば産婦人科へやってください」
――そうだ。産婦人科なら僕が入ることは絶対ない。
春雄は秋子の献身的な看護のことを訴え、罰を与えるのは望んでいないことを話した。
院長も納得した。
「そうか、他ならない君がそれほど言うなら産婦人科へ換えることにしよう」
*
ところが……、やっぱり……。
春雄は秋子のいる産婦人科の病室にいるのである。
おや? 前とはちょっと様子が違っています。
春雄が紅茶をいれている。
秋子はベッドに横になって、微笑んで春雄を見ている。
そして――
秋子の横には、小さな赤ちゃんが、静かな寝息をたてている。
一年後の、秋の日の午後です。
【了】
「紅茶」は一粒で二度おいしい作品です。ストーリーの流れでバッドエンドかと思いきや、ページを捲るとハッピーエンドが待っている。
最初の流れのままで終わったほうが良いという意見が多かったです。オチを重視するショートショートでは確かにそうです。当初書き上げたときはそうしました。ですが、春雄が絶対に入ることがない産婦人科の病室にいることを書きたいのと、私の作品はバッドエンドのものが多いので、今回はハッピーエンドの部分を加えました。
――もしかしたら、今の紅茶に
だが、何ともなく数秒が過ぎた。
「い、院長先生。この配置換えのことは秋子さんに話しているのですか」
「いや、まだだけど」
春雄はほっとして、しかし強く言い放った。「そ、それはやめてください。できれば産婦人科へやってください」
――そうだ。産婦人科なら僕が入ることは絶対ない。
春雄は秋子の献身的な看護のことを訴え、罰を与えるのは望んでいないことを話した。
院長も納得した。
「そうか、他ならない君がそれほど言うなら産婦人科へ換えることにしよう」
*
ところが……、やっぱり……。
春雄は秋子のいる産婦人科の病室にいるのである。
おや? 前とはちょっと様子が違っています。
春雄が紅茶をいれている。
秋子はベッドに横になって、微笑んで春雄を見ている。
そして――
秋子の横には、小さな赤ちゃんが、静かな寝息をたてている。
一年後の、秋の日の午後です。
【了】
「紅茶」は一粒で二度おいしい作品です。ストーリーの流れでバッドエンドかと思いきや、ページを捲るとハッピーエンドが待っている。
最初の流れのままで終わったほうが良いという意見が多かったです。オチを重視するショートショートでは確かにそうです。当初書き上げたときはそうしました。ですが、春雄が絶対に入ることがない産婦人科の病室にいることを書きたいのと、私の作品はバッドエンドのものが多いので、今回はハッピーエンドの部分を加えました。