第10話
文字数 1,288文字
姉妹の部屋の扉を開ける。
そこには暗闇の中で「ツラい! ボクが何をしたって言うのさ! あはっ、血が生ぬるい。苦労して声優になったのにみんなの声が怖いよ。
ううっ。イヤ、イヤァ! 嫌われ者になんかなりたくないよ」
レイ役の時より少し声が高いけれど、紛れもなく藤村リョウさんの声だった。
「お姉ちゃん、また酒飲みながらリスカしてるの? もうやめて。あえてエゴサして自分の名前検索するのは。ゲロの絵文字に犬と猫の絵文字を続けて打つとさらにアンチコメ見つかるけど、何にもならないよ」
「わかってる。わかってるけどさ。何で嫌われてるのか知りたくなるんだ。でも見すぎて頭がパニックになって、気がつくと夢中で手首切ってるんだ。
うん、脚とかも。
ごめんね、こんな姉で」
「ううん、声優養成所に2人で通ってお姉ちゃんが結果出したじゃない。私の分まで夢を叶え続けてほしいよ」
「そっか。うん。でもレイ役降りろとかレイだけパーティー編成から外してるとかレイの声がゲーム中に流れるだけで死にたくなるとか散々なツイートばかりでさ」
リルが電気を点けるとそこには下着姿のリョウさんが座っていた。
腕も脚もカッターのキズだらけだった。
「あれ? お客さんいたんだ。ど、どうも藤村リョウです。私のことキライですか?」
私は相手に伝わる真剣な口調で言った。
「正直推しではないです。でもソードダンサー好きでレイくんは万能な使い方できるキャラなのでよくキャラボイス耳にしてます。
やめないでください」
「誰推しなの?」
「2番推しは月の絵文字で推しマ付けられたりしてる……」
「イージアくんか。ボクも推しなんだよね。同担拒否じゃないよ。ってことは柴原紺くん好きなの?」
「はい。他の出演作品も追うくらいには。でもイージア役が1番好きです」
「今度彼からサインもらってくるよ、飲み友達だから。まっ、彼には同じ事務所の後輩声優のカノジョがいるんだけどね。
で、名前は?」
「咲月といいます。花屋の店員と地下アイドルユニット手がけてます」
「いいね! ボクも声優辞めてそれ目指そうかな。でも高い歌声出ないしな〜。私アンチからリプされる度にどんどん声嫌いになってくんだ。
ねえ、咲月ちゃんかわいい見た目してるし抱き合お?」
そう言いながら、私の身体をハグするとそのままリョウさんは子どものように泣き出した。
「亡き母がボクの声、ショタっぽくていいねとか褒めてくれたのに。咲月ちゃん、咲月ちゃん!」
「はい、リョウさん」
「ボク生きててもいいのかな。電車乗る時ホームドアのない駅とかだと飛び込みそうで怖くなる時あるんだ。
でも死んだらアンチの思うつぼだし……。
うええええええん!」
さすが声優というべきか泣く時の声もまるでアニメのセリフを聞いてるかのような迫真さがあった。
「あっ、下着姿なのは暑がりなのとこの姿だと色んな所にキズ付けられるってのがあるんだ。
最近は収録現場に長袖で行ってる」
リョウさんの声は明瞭(めいりょう)で聞き取りやすく、妹が舌っ足らずな感じだとしたら彼女は正反対だった。
彼女の力になりたい。
でも特にいいアイデアが浮かんでこなかった。
そこには暗闇の中で「ツラい! ボクが何をしたって言うのさ! あはっ、血が生ぬるい。苦労して声優になったのにみんなの声が怖いよ。
ううっ。イヤ、イヤァ! 嫌われ者になんかなりたくないよ」
レイ役の時より少し声が高いけれど、紛れもなく藤村リョウさんの声だった。
「お姉ちゃん、また酒飲みながらリスカしてるの? もうやめて。あえてエゴサして自分の名前検索するのは。ゲロの絵文字に犬と猫の絵文字を続けて打つとさらにアンチコメ見つかるけど、何にもならないよ」
「わかってる。わかってるけどさ。何で嫌われてるのか知りたくなるんだ。でも見すぎて頭がパニックになって、気がつくと夢中で手首切ってるんだ。
うん、脚とかも。
ごめんね、こんな姉で」
「ううん、声優養成所に2人で通ってお姉ちゃんが結果出したじゃない。私の分まで夢を叶え続けてほしいよ」
「そっか。うん。でもレイ役降りろとかレイだけパーティー編成から外してるとかレイの声がゲーム中に流れるだけで死にたくなるとか散々なツイートばかりでさ」
リルが電気を点けるとそこには下着姿のリョウさんが座っていた。
腕も脚もカッターのキズだらけだった。
「あれ? お客さんいたんだ。ど、どうも藤村リョウです。私のことキライですか?」
私は相手に伝わる真剣な口調で言った。
「正直推しではないです。でもソードダンサー好きでレイくんは万能な使い方できるキャラなのでよくキャラボイス耳にしてます。
やめないでください」
「誰推しなの?」
「2番推しは月の絵文字で推しマ付けられたりしてる……」
「イージアくんか。ボクも推しなんだよね。同担拒否じゃないよ。ってことは柴原紺くん好きなの?」
「はい。他の出演作品も追うくらいには。でもイージア役が1番好きです」
「今度彼からサインもらってくるよ、飲み友達だから。まっ、彼には同じ事務所の後輩声優のカノジョがいるんだけどね。
で、名前は?」
「咲月といいます。花屋の店員と地下アイドルユニット手がけてます」
「いいね! ボクも声優辞めてそれ目指そうかな。でも高い歌声出ないしな〜。私アンチからリプされる度にどんどん声嫌いになってくんだ。
ねえ、咲月ちゃんかわいい見た目してるし抱き合お?」
そう言いながら、私の身体をハグするとそのままリョウさんは子どものように泣き出した。
「亡き母がボクの声、ショタっぽくていいねとか褒めてくれたのに。咲月ちゃん、咲月ちゃん!」
「はい、リョウさん」
「ボク生きててもいいのかな。電車乗る時ホームドアのない駅とかだと飛び込みそうで怖くなる時あるんだ。
でも死んだらアンチの思うつぼだし……。
うええええええん!」
さすが声優というべきか泣く時の声もまるでアニメのセリフを聞いてるかのような迫真さがあった。
「あっ、下着姿なのは暑がりなのとこの姿だと色んな所にキズ付けられるってのがあるんだ。
最近は収録現場に長袖で行ってる」
リョウさんの声は明瞭(めいりょう)で聞き取りやすく、妹が舌っ足らずな感じだとしたら彼女は正反対だった。
彼女の力になりたい。
でも特にいいアイデアが浮かんでこなかった。