第2話

文字数 851文字

§§
「・・・ねえ」
「・・・なんだ」
「もう寝た?」
「まだ起きているよ」
「わたし、この前の夏の祭りを思い出していたの。あなたの家族や、親戚と一緒に行ったお祭り。でも、名前が思い出せなくて・・」
「ああ、おすいか様か」
「そうそう、西瓜のお祭り。あれは、なんというか、ほんと強烈だったわね」
「そうかい」
「だって、まあ、この街の人はあなたで慣れているつもりだったけど、さすがにあれは・・・なんであなたの街の人はあんなに狂ったように西瓜を食べるのかしら?」
「なんでって言われても、そういう伝統だからだよ。ほかに、特に有名なものもないからかなあ」
「あなたのお父さん、早食い競争で気絶しちゃうし、弟さんは西瓜リレーで鎖骨を折るし、しまいにはあなたは、なんだっけ、あの西瓜の化けものみたいなのを奪い合うやつ」
「瓜神の儀」
「そうそう、『うりがみのぎ』って言ったわね。あれの決勝戦で、滝つぼに向かって飛び降りたわよね」
「1年に1回の西瓜男を決める日だ。興奮するのは仕方がないよ」
「いや、ほんと有り得ない光景だったわ。みんなで西瓜まみれになって、いたるところで怪我人が出て、とてもじゃないけど、文明人の姿には見えなかったわよ」
「そう」
「やっぱりあのお祭りがターニングポイントだったのね、正直私あれを見て、ちょっと、この街で暮らすのはきついかなって思ったわ。理解が出来ない」
「そう」
「なんていうか、完全に狂った世界よね」
「ふうん」
「あ、ごめん、怒った?」
「いや、残念だなって思っただけだ」
「何よ、残念って。価値観の相違が?それとも、私達の文化的背景が違うから?それとも、あれかしら、私の物事の捉え方がおかしいっていうのかしら」
「そんな難しい事はわからないよ。ただ、君は俺の街を見た。俺の街の人を見た。それで、この街が理解できないと言った。そのことが、残念なだけだ」
「・・なんか、ボキャブラリーが少なすぎて、何言ってるのかよく分からないわ」
「ごめんな」
「バカね、もう謝ることないのよ。もう明日から、私達は他人なんだから」
「そうだな」
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