第3話

文字数 963文字

§§§
「・・・・ねえ」
「まだ寝てないのか」
「さすがに今日は寝れそうにないわ・・・お話しましょうか。私に聞きたいことある?最後の夜よ。何でも答えてあげるわ。なんか私に聞きたかったこととか、ないの?」
「あー」
「なんでもいいわよ」
「そうだな。じゃあ、一つ教えてくれ。何で君は俺と別れようと決めたんだ?」
「・・・その話は、昨日したわよね。忘れちゃったの?」
「聞いたけど、ごめん、話が難しすぎて、良く分からなかったんだ」
「しょうがないわね・・・いいわ、もう一度かいつまんで説明するから、よく聞いててね。私があなたとの別れを決意した最も大きな理由は一つ。それは文化の違いよ。悪いけど、シティでは誰もロバの肉なんて食べないし、お風呂に入らない人もいない。ボロボロのスーツの上下を着たおばさんもいない。そもそも、西瓜の奪い合いで死ぬ人なんて聞いたことがないわ」
「あれは大切なお祭りなんだよ」
「それでも、おかしいわよ。西瓜を取ろうとして命を落とすなんて。まあとにかく、ダメなの。そういったことが、やっぱり私には無理なの。正直耐えられないの」
「うーん」
「なによ、せっかく分かりやすく簡単な言葉で説明してあげたのに。まだ何が判らないって言うの?」
「いや、君がこの街が嫌いな事はもう良く分かったよ。でも、だからといって、なんで俺と別れることになるんだ?」
「それは、なんていうの、あなたはこの街の人だからよ。死ぬまでその性格や考え方、文化的背景というのは消えないの。それは切っても切り離せない関係だから。しょうがないじゃない、もう無理だなって思っちゃったんだから」
「前に、君が始めてこの街に来た時、君はこの街が好きだといったよな」
「言ったかしら」
「言ったよ。俺は嬉しかったから覚えてるんだ」
「じゃあ言ったのか知れないけど、旅行と生活では違うのよ。もう、私だって1年この街に住んだんだから。そりゃあ、感覚だって変わるわよ。新鮮だったことも当たり前に思えてくるし、逆につまらないと思っていた今までの世界を改めて見直したりね」
「そうか」
「分かったかしら」
「つまり、この街が嫌いになったから、その街の人間である、おれのことも、嫌になっちまったんだね。平らに言えば」
「それを言うなら平たく言えば、よ。まあいいわ。大体そんな感じね」
「ありがとう。よく、分かったよ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み