第6話

文字数 883文字

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「素晴らしい天気ね。なんか、本当に慈しみと静けさに満ちた世界って感じ」
「駅まで送っていくよ。さっき隣の木こりからロバを借りる約束をしたんだ」
「ありがとう。でも、車をもう予約してしまったから。ここで結構よ」
「そうか。じゃあ、元気でな」
「あなたもね」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・あのさ」
「なに?」
「またすぐ戻ってこいよ」
「は?」
「またすぐこの街に戻っておいで。それで、また俺と付き合おう」
「何を言っているのかしら」
「知的レベルの高い男なんて、やめとけよ」
「・・・」
「そんなやつと付き合っても、きっと君は疲れちまうよ」
「・・・」
「俺ぐらいの奴が、君にはちょうどいいはずだよ。物事にはバランスが必要なんだ。ちょうどいいじゃないか」
「あら、ずいぶんスマートなことを言うじゃない」
「俺だって君に色々教えてもらって、ちょっとは成長してるんだ」
「そうね・・・でもご心配なく。私は大丈夫よ。そんな余計な心配してくださらなくて結構よ」
「そうか」
「ごめんね、シティに戻ったら忙しいのよ。もう今からデートの予約で一杯なの」
「そうか」
「あなたにメールしてる暇もないぐらいよ、ってあなたPCも携帯も持ってなかったわね。まあいいわ、手紙を書く暇もないくらいなの」
「そうか」
「シティに戻ったらね、お芝居見たり、コンサート行ったり、お友達のパーティに出たり、とにかく忙しいの。あー、楽しみだわ。エステなんてもうどれくらい行ってないんだろう」
「そんなに忙しいんじゃ、しょうがないな」
「そうなの。だから、また気が向いたら、手紙でも出すから、その時までお元気でね」
「分かった」
「その時は新しいボーイフレンドの写真でも送ってあげるわ」
「それはいらないよ」
「・・・本当、忙しいんだから」
「・・・そうか」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・こういうのは、なんていうか分かる?」
「・・・なんだろう、自慢話ってやつか?」
「・・・今のはカラ元気っていうの。それじゃね」
「・・・」
「今までありがとう、元気でね」
「元気でな。俺は、今でも君のことが好きだ」

§§§§§§§§
「さようなら」
「さようなら」

fin
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