占い

文字数 460文字

「金色が見えるんですか!」

私は占い師のところに来ていた。
私より先に占ってもらっている40代くらいの女性が、「金色」の話をしていた。
占い師は透視やオーラの読み取りができる人で、「金色が見える」と言ったようだ。
女性は何度も「金色が見えるんですか」と繰り返し、続けて、息子が子どもっぽい、旦那は協力してくれない、担任の山下先生には感謝している、と、熱心に語っていた。
女性は、占い師の言う一言一言に「へぇー!」「そうですかー!」と感心していた。

私は、盗み聞きしてしまっている事に居心地の悪さを感じながらも、占い師は何を思っているんだろう、と考えた。
熱く話される他人の家庭の事情を聞いて「私にどうしろっていうの」って思わないんだろうか。心理士の私が言うのもおかしいけれど。
私は、自分がこの次に占われるというのにしらけた。

女性の話を聞いている限り、家庭の問題は解決していなさそうだったが、「金色が見えた」ことに、女性は満足し、安心して帰って行った。

私は心理士として、色々な悩みを聞いているが、私にも、金色が見えたら良いのにと思った。
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