会議

文字数 540文字

「はい、僕の代わりに彼女が出席します。……いえ、大丈夫です。既に数多くの会議にも出ているので。僕より鋭い意見が言えるかと。」

職場の電話で、先輩が外部機関と話していた。「彼女」とは、紛れもなく私のことだ。

微かな胸の痛みと、はっきり応対する先輩への感謝、憧れを感じながら、なんにもない顔で仕事をする。私は来週、大きな会議に先輩の代わりに出席することになっていた。

自意識が過剰な私は、さらりとした先輩の語り口から、電話口の相手の言葉を想像する。「さざなみさん?誰ですか?経験はあるの?」

Ghost like girlfriend というアーティストのfallin' という曲を聞いている気分になった。誰も私を期待していない世界を、愛することは難しい。

そんな中で、先輩の迷いない口調だけが、私を支えた。今日、半日お休みをもらっていて良かった。会議の事前資料を持って、午後は準備をしておこう。

もしこれが小説だったら、会議で私は周りを圧倒するんだろうな。入念に精査された情報と知識で、実力を見せつける。このエッセイだって、そんな展開になれば面白いのだけれど、実際は、きっとそんな風にはいかないから、先輩に迷惑をかけないように、誠意を込めて成し遂げたい。朝から降っていた雨は止んだ。良い午後だ。
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