論文の執筆

文字数 600文字

「論文はどうなりましたか?」

この間、大学院の時からお世話になっている教授にお会いした時に言われた。
いや、実際は、この間というのは嘘で、去年から言われ続けている。研究論文を、心理学の専門雑誌に投稿するように言われているのだ。

私は、「もうけっこう前の研究ですし……」と弱気に言ったのだが、「問題ないです」との事だった。

ということで、私は本当はエッセイを書いている場合ではなく、論文を書かなくてはいけないのだ。

ここまでこの話を書いて気づいた。職場に論文の資料を忘れてきた。休憩時間に目を通すため、持っていったのだった。なので、今日は論文は出来ない。

数日前、出来たところまでの論文を教授に見せたら、後日、大量の修正箇所を指摘したメールが届いた。ざっと目を通して、気が遠くなってしまった。「この部分は、意味不明である」と書かれていた事だけが頭に残っており、後は覚えていない。

意味不明な論文を、誰が雑誌に採用すると言うのか。ちなみに以前別の専門家からは、私の研究は「荒削りである」と言われた。しかし、教授の修正箇所を盛り込むと、字数が大幅にオーバーする。荒削りをさらに削る事になるぞ。

今日の朝、教授から追伸メールが届いていた。どの点をどう変えたら良いか、より細かに説明した内容だった。

最後には、
「必ず採用されると思います。」
と書かれていた。

教授の、飄々とした語り口のままに読める、「必ず」という言葉を噛み締めた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み