第5話 流星痕

文字数 886文字

「突然ですが、ご遺族の連絡先をご存じないでしょうか?」
知らない人からメールを受けった。

電子メールのボックスには、様々なメールが届く。
時には知らな人からのものも。
ウィルス添付メールなどを警戒して見ないで捨ててしまう場合も多い。
今回も知らない人の名が差し出し人のところに表示されていた。

特に怪しい添付ファイルはないようだ。
メールを開いてみるとていねいなあいさつの後に懐かしい友人の名前が記されていた。
手紙の主は、ジャーナリスト。
亡くなった方が残したWebページに関する記事を執筆しているのだという。

友人が亡くなったのは、二十年くらい前だろうか。
彼がWebページを作っていたかどうかは記憶にない。(当時は、個人がWebページを開設するのが流行っていた。まだ、ブログやSNSが流行り始める前だったと思う。)

ジャーナリスト氏のメールを手掛かりに故人のページを検索した。
あった。確かに我が友人のものである。
しかし、内容に見覚えはない。
彼の生前、私はこのWebの存在を知らなかったのかもしれない。

彼とは仕事上の付き合いはあった。
しかし、ご家族やプライベートな交友については存じ上げない。
ジャーナリスト氏へは、「私は知らない。心当たりに尋ねてみようか?」と返信した。
ジャーナリスト氏からは「ぜひ!」との返信があった。

早速、Yさん、Tさん、Hさんなどにメールを打った。
みな、故人のWebページについては、「初めて知った」との反応だ。
「自宅へ伺ったこともあるが独身だったようだ。」
「病院へお見舞いには行ったが・・・。」
「お墓参りしたが、ご遺族は知らない。」
遺族の連絡先の情報については、芳しくない。
手掛かりはつかめなかった。

ジャーナリスト氏に具体的な情報がないことを返信する。
先方も原稿の締切までにできるだけの情報を集めたいということなのだろう。

・・・後日、ジャーナリスト氏の記事がWebにUPされた。

亡くなった友人の残したWebページは「落下星の部屋」という。
落下星なるハンドルネームを名乗った彼の生きた証が
今なおWebを通して私たちに語りかけてくる。
流れ星の跡の「流星痕」のように・・・。
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