第4章

文字数 1,498文字

2020年11月1日のブログより

 3月から読み始めたサフォン氏の本(スペイン語)5月までだいたい1か月に1章ぐらいのペースで順調に読めていたのですが、第4章はページ数も120ページくらい(今までは3章合わせて100ページくらいだった)、6月からスペイン語教室や学校も再開してほとんど生活は前と変わらなくなり、しかも9月は次男の落ち込みで1か月ほど全く本が読めない状況も続いたのでかなり時間がかかってしまいました。

 第4章はアリシアという名前の20代後半の女性が主人公で、彼女の目を通して様々なことが書かれています。彼女は子供の時に内戦で家族を失い自身も空襲の時に腰に大けがをして、時には酷い痛みに襲われ薬が手放せない状態です。苦労して育ちましたが天性の勘のよさがあり、ある男の人のところで探偵のような仕事をしていました。

 そのアリシアが警察に協力して大臣の失踪事件を調べることになります。大金持ちで文化的にも活躍して人気の高い大臣が、ある朝に突然ボディーガードと共に出かけてそれっきり帰ってきてないというのです。この大臣は以前フェルミンや小説家のマルティンなどもいたモンジュイックの所長も務めていて、そこの囚人サルガドから脅迫の手紙を受けていたのですが、サルガドは恩赦で出所してすぐに何者かに殺されていました。サルガドが最後に訪れたのがセンペーレと息子書店ということで、ダニエルとフェルミンが怪しい本屋の2人組と疑われてしまいます。警察に協力しているアリシアからの視点で書かれているので、前のシリーズで主人公だったダニエルも、怪しい本屋の店員とか妻のベアトリスは物凄い美人でりっぱな婚約者がいたのにダニエルのようなつまらない男と結婚してしまったとか、散々なこと書かれています(笑)

 失踪した大臣については第3章にも書かれていたのですが、とにかくお金持ちで宮殿のように広い屋敷に住んでいる、でも妻が何年も病気で寝たきりだったり、何者かに命を狙われていたりしてあまり幸せではなさそうです。1人娘を溺愛していますが、彼女もまたある事件がきっかけで学校に通うことを禁じられ、以後は家庭教師と使用人に囲まれて同じ年頃の友達もいない生活をしていました。

 アリシアは警官と一緒に大臣の屋敷に行くのですが、門を入ってからもテーマパークのように広い庭を通り、門番や管理人など何人もの人に挨拶してやっと大臣の秘書に会って話を聞く、偉い人について事情徴収するのはなかなか大変です。そして話を聞くほどに囚人だったフェルミンやマルティンが怪しく思えてきます。

 第4章の終わりで失踪した大臣の車がバルセロナで見つかったことがわかり(大臣の家はマドリッドの郊外にある)アリシアは電車に乗ってマドリッドへ向かうというところで第4章は終わり、次の章からいよいよ大臣はどこへ行ったのか、脅迫の手紙を書いたり釈放されたサルガドを殺したのが誰だったのか、謎が解明されそうです。

 本を読んでいて登場人物の誰もが内戦や独裁政権で深い傷を負いその痛みに耐えながら生きている様子がリアルに伝わり、息苦しくなるほどでした。家族を失い自身も大けがをしたアリシアの激しい痛み、大臣や溺愛されて何不自由なく育った娘さえ深い悲しみを纏い、苦しみの中で生きていました。そんな苦しみを支えるのが本であり、そして本に操られて登場人物はさらに迷宮の奥深くに迷い込んでいく、本の魅力と恐ろしさをこれほどうまく表現した小説は他にはないと感じました。

 スペイン語で読んでいるので時間はかかりますが、それだけ直接本の世界に入ることができたようにも思います。

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