第2章

文字数 1,715文字

2020年、4月30日のブログより

「精霊たちの迷宮」スペイン語の本の第2章を読み終わりました。第1章を読み始めたのが3月の初め、最初は丁寧に1ページづつスペイン語の文を写して単語ノートを作っていたのですが、これではいつまでたっても終わらない(笑)と気づいて途中から直接本に単語の意味を書き込むようにして、だいぶスピードがあがりました。それでも40ページ読むのにだいたい1か月はかかる、まだ日本語訳の本を読むよりかなり時間はかかります。

第2章はフェルミンの壮絶な過去が書かれています。詳しい内容は書かないようにしますが、それでも戦争関係の残酷な話が苦手な方はここから先は読まないでください。

「風の影」シリーズでダニエルのよき指導者であるフェルミンは最初は政府側の役人でしたが内戦で警察に追われるようになります。銃の入った大きな箱に隠れて密航したところ、その船に宿敵フメロ刑事が乗り込んできます。「風の影」から登場するフメロ刑事は不幸な少年時代の体験で性格異常な大人になります。普通の社会ならサイコパスの殺人者になるようなフメロ刑事が、内戦の時は手柄をたて出世します。フメロ刑事の残忍さは想像を絶するものでした。そしてフェルミンは海で溺死寸前まで追い込まれます。この部分の描写が細かくて、スペイン語で読んでいるために斜め読みもできず言葉の1つ1つが水の渦になって攻撃してくる、溺死の恐怖や苦痛をいやというほど体験しました。アレキサンダーの父フィリッポス2世が敵の捕虜300人を海に沈めた、オスマン帝国のある皇帝は前の皇帝のハーレムの女性を全員袋に入れて海に捨てた、など残酷な権力者が大勢の人間をまとめて溺死させるという話はかなりありますが、殺される側にとってはかなり苦しい残酷な方法です。でも殺す側の人間にとっては役に立たないから、必要ないからと簡単に大勢の人間を殺してしまうのでしょう。

そして後半で、フェルミンは今度はバルセロナの空爆を体験します。前半の密航ではフメロ刑事というはっきりとした敵に追われるのですが、飛行機から爆弾を落とされ無差別に市民が殺されるというのも怖ろしいことです。ランブランス通りや造船所跡に作られた博物館などには私もスペインに行った時に訪れましたが、あのあたり一帯が火の海になり多数の死者が出たということを想像すると怖ろしくなります。

小説はフィクションなので、もちろんダニエルやフェルミンは架空の人物です。でも小説の中で彼らの体験として書かれると、まるで自分も同じ体験をしたかのような激しい衝撃を受けます。なぜこの時期に恐怖や怒りをかきたてるような本を、わざわざ時間をかけて読んだのだろうかと。

本を読むということも旅や神からの啓示と同じ強烈なメッセージです。今この時期になぜ溺死の恐怖や苦痛を感じる本を長い時間をかけて読まなければならないのか。肺炎で呼吸ができなくなる苦しさは溺死と同じではないかと考えました。人間の身体は危険がせまっているほど激しい苦痛を感じる仕組みになっています。その場所から一刻も早く離れ、助けを呼ばなければならないからです。そのような殺し方は非常に残酷だけど殺した側の人間がその痛みを感じることは決してありません。今回小説を通じて溺死の苦痛をいやというほど体験したのも、肺炎で呼吸ができなくなって死ぬことはこういうことだと教えられた気がします。

スピリチュアルではよく恐怖や怒りは悪いことを引き寄せる、なるべくよいこと、楽しいことを考えて笑顔で過ごしましょうと言っています。でも周りで起きていることを深く考えずに、自分の都合のいい考えだけを取り入れて、自分のメソッドの宣伝をしたり、自分は毎日笑顔で楽しく過ごしています、ということがはたしてスピリチュアルな生き方なのでしょうか?私は1か月間ほぼ毎日スペイン内戦で警察に追われたり空襲を経験する本を読んで、内戦をじっくり体験しましたが、これで実生活が悪くなるということはまだありません(別に特別よいこともなかったけど)恐怖や怒りはきちんと体感することで、今世界で起きていることに対してきちんと考えられるようになると思います。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み