交換日記

文字数 1,136文字

 日記

「交換日記やろうよ」

 高校三年、最終学年になってから彼女は言った。私は目を丸くした。なぜ今?

 クラス替えがあったのは二年、つまり一年間彼女とは友達だった。同じ友達グループだから仲は良いけれど、同じ学校、同じクラス、同じグループ、これで一体何を書けと?

 しかし、頼まれると断れない性格。

「わかった……」

 返事をして、渡されたノートをカバンにしまう。

 帰り道、自転車をこぎながら、電車に乗りながらずっと考えてた。なんで私?

 彼女とは二年になりたての修学旅行で、たまたま一緒のグループになった仲だ。

 私は四人グループ。彼女も四人グループ。修学旅行のグループ行動が八人からなので人数合わせで一緒になっただけだった。

 同じクラスなので彼女とは挨拶はしたが、会話はしたことがない。修学旅行ではそれぞれの友達と話して名ばかりのグループ行動。仲が良くなったのは修学旅行の後からだった。

「今修学旅行に行ったら楽しかったのにね」

 そんな話がよく出ていた。が、話が合うか? 趣味が合うか? となると話は別だ。何一つ合ってない気がする。

 元々別のグループだったのも共通の話題が無かったからだ。今はクラスや行事、行動が一緒だから話が合うけれど。いつも一緒にやってたら書くことなんて無いんじゃないですか?

 それに困ったことに私は絵が好きで、マンガやアニメが好き。彼女は文学だったり……何が好きなんだ? 結局のところそこもわからない。

 だいたい私は文字が書けない。本を読まないから文の書き方を知らない。

…………

 悩んで悩んでその悩みを書いた。

 何を書いていいかわからないをグダグダと三行ほど。後は落書きをしてページを埋めた。

 次の日彼女にそのノート渡して、一日過ぎてノートが戻ってきた。びっちりと家でのことが書かれている。なるほど! と思い、次からは彼女の知らない通学や家でのことを書いた。

 そのうち書くことにも慣れてきて、趣味の話も書いていった。好きなマンガの話しや絵についても。けれど、やはり趣味には興味が無いようでいつも一方通行。交換日記なのか自分の日記なのかよくわからないままノートが増えていく。

 元々一冊から始めたものだったが、彼女が書いているときに暇なのでノートを増やした。二冊のノートを交互に渡す。そしたら毎日書けるし毎日読める。微妙に会話が噛み合わない交換日記は卒業するまで続いた。

 卒業後何度か旅行や遊びにも行ったが、お互いに家庭を持って今では疎遠になった。

あれだけ交換日記を続けていたけれど、多分彼女を理解してはいない。彼女も多分そうだろう。お互いに書きたいことだけを書いた交換日記だったからな。

 意味がわからなかったけど、楽しかった記憶だけはある。

 彼女、元気にしてるかな?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み