同棲記念日

文字数 547文字

お題 同じ文末で物語を〆る
この魔法はあと十秒で消えます

終わりと始まり

 私達が同棲して十年の歳月が過ぎた。最初は何も無い四畳半のボロアパート。それでも私は幸せだった。
 二人で作った小さな会社は時代の波に乗り大企業となった。そして私達は二年前に結婚。それからは夢のような生活。都内の高層マンション、軽井沢の別荘、家政婦まで雇えてる。

───これはまるで魔法、
    何でも買えるし何でも手に入る───



「料理ができるまでこれでも飲んでて」

「お、懐かしいなこのサイダー、これ旨いんだよな」

 ニカッと笑うあなた、出されたコップを疑うことなく使う。同棲記念日、これは私とあなたしか知らない。そして今日この別荘に来ることも誰も知らない。私はキッチンに置いたクーラーボックスを開けた。中身は1本の包丁だけ。

 その時ソファーに座るあなたの腕がだらりと落ちた。薬が効いたようね。

 今日の食材はあなた。この日をずっと待っていたの。私は貧乏でも体がボロボロでも楽しかった、あなたの愛があったからよ。

 なのに結婚したら見えないよ。あなたの愛も二人の時間も。だから全てを終わらせるの。

 でも安心してね、ちゃんと生命保険には入れてあるから。私は一人でも生きていける。

 もう愛なんていらない。
 この魔法はあと十秒で解けるから……





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