第1話

文字数 1,124文字

昨年(2023年)の出生数は75万人あまりで、過去最少を更新したそうだ。
私(団塊ジュニア世代、50代前半)が生まれたころは200万人を超えていたので、この50年で約3分の1に減少したことになる。

それ以上に驚くのは、ここ10年での減り方だ。
私が子どもたちを産んだ約10年前は、100万人規模だった。
巷で言われる少子化に絡む諸問題に対し、対策を打ってきたはずではなかったのか。
その結果がこれか、と思うと、なかなか厳しいものがある。

今の政府・自治体は、アタマで思いつくことは何でもやっている、と思う。
特に金銭的な補助は、これでもか、という勢いで拡充している。
「子育てにはお金がかかりすぎる。だから産めない」という“国民の声”に真摯に耳を傾けた結果であろう。
子育て支援拡充の目処がたったとたん、今度はそもそも結婚すらできないのだ、と論旨がすげかえられつつある。
“お金なんかばらまいたって、子どもなんか増えないよ~だ。あっかんべ~”といわんばかりだ。
すっかり国民からはしごを外されているように私には見えて、政策立案者が少々気の毒になったりもする。
血税をつぎ込む以上、不毛なかくれんぼにつきあっている暇はないんだよ、という嘆きが聞こえてきそうだ。

会社側も、政府からの要請を受け、賃上げに積極的に取り組む姿勢を見せている。
物価高が背景にはあろうが、ほんの数年前には賃上げの“ち”の字もなかったことを踏まえると隔世の感すらある。
初任給をアップする、と表明している会社も出てきている。
またジョブ型雇用の導入は、若者がいきなり高給取りになる道を拓いた、と言えよう。

若者にとって、お金の面では追い風が吹いていると言えよう。
少なくとも、団塊ジュニア・就職氷河期世代の私には、そう思えるのだが。




お金は脳化社会と、とても相性がいい。
前提条件を整理し、論理的なプロセスを踏んでいきさえすれば、誰でもだいたい同じような答えに行き着くので、万人の理解を得やすい。
定量化も容易だ。
「ああすれば、こうなる」と考えて問題解決を図るのであれば、お金以上のツールはなかなか思いつかない。

しかし少子化は、本当にお金の問題なのだろうか。
本当にお金で解決可能なのだろうか。


伴侶を見つけ、結婚し、子どもを産み育てるという、生の営みは、脳化社会の対局にある。
人生の、“子どもを産む”という時点だけを取り出して何とかしようとしても限界があるように思うのだ。
この世に生を受け、受け取ったものを受け渡し、やがてあの世へと旅立つ。
その大きな生の流れの中でこそ捉え得ることではないだろうか。
これは生身の命と向き合うこと・向き合い続けること、である。

からだと向き合う。
そろそろ考えてみてもいいんじゃないか、と思う。
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  • (1)はじめに

  • 第1話
  • (2)手から伝わる思い

  • 第2話
  • (3)限りのあるもの

  • 第3話
  • (4)ニホンヤモリと息子

  • 第4話
  • (5)公立小学校の、先生と級友たち

  • 第5話
  • (6)食べることで命をいただく、ということ

  • 第6話
  • (7)「強さ」を支えるもの

  • 第7話
  • (8)「少子化」とは何か

  • 第8話
  • (9)母親は交換可能か

  • 第9話
  • ①世の中の動向

  • 第10話

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