第5話

文字数 513文字

事件は、それから半年程して起きた。

「聡。ちょっといいか……」
「ん?おう」

体育の授業が終わり、体操服から制服へと着替えなおす更衣室。
肩を叩かれ、振り返ると、青白い祐輔がいた。

「お前、どうした?吸血鬼みたいだぞ」
「いや、まぁ……」

どこか言い辛そうにしていたので、なるべく部屋の隅の方に移ると、ポツ、ポツ、と祐輔が話し始めた。

「山内さんのことなんだけどさ……。お前の幼馴染を悪く言うことになって申し訳ないんだけど……、あの子、異常だわ」
「異常?」

思ってもいなかった祐輔の告白に、聡は思わず聞き返す。

「うん。最初は大人しかったし、物知りで凄いなと思って、よく話してたんだけど……。段々物知りのレベルが異常になってきて、俺のほくろの位置把握してたり、家族の勤め先知ってたり、幼稚園の頃のアルバム写真とかも持っててさ……」
「何だそれ……。やめろって言ったか?ちゃんと」
「もちろん言った!……でも、“こんなことまで知ってるなんて、ミステリアスな女でしょ?”って、訳わかんない返しされてさ……」

そこまで言って、祐輔は張り詰めていたものが切れたのか目から何滴もの涙を流し、聡は絶句しながらも、どうにかその震える肩を贖罪のようにそっと撫で上げた。
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