第1話「プロローグ・分かれ道」

文字数 630文字

演じるって言ったって、俳優や声優とは違うのよ?
でも、確かに、欺いているの。自分に近い、少し理想に寄ったキャラクターを…。

デジタルな薄い皮だけど、乖離(かいり)は必ず起こるわ。

しかも、自分の延長にあるモノだもの。
皮膚に投げつけられた誹謗(ひぼう)や中傷だからといって、ただの「役」だと斬って捨てるには苦すぎる。
必ずあなたも苦しむ事になる…。

でもね。たった一つの薄い皮があるからこそ、見る者に「魂」があると見出させるのよ。
私達の中身を指して「魂」と尊び、過去を「前世」と切り分ける。

神を信じぬこの土地この時代で、それこそが指し示すのに最適な言葉だと。

きっとこの界隈(かいわい)が広がれば、世界に神を取り戻せるわ。

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まだ、この時は、私には彼女の言葉が理解できなかった。
電子の皮と、地続きの前世を手に入れたばかりの私には。
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あの子は誠実であり過ぎて、利他ですり減り、倫理に殺された。
私は…絶対に許さない。
(かたど)りだけ見せ、報いなかったこの世を。

あなたも同じ匂いがする。
このまま行けば、あなたもいずれ、失うか死ぬ。

だから私の傍に居なさい。
私が神となるその日まで。

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そう言って差し出したされた手を、私は見つめるコトしかできなかった。
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