第2話「身投げ」

文字数 680文字

 大学も二年になろうかというと、慣れなかった一人暮らしも、不安だった友人関係も、だいぶ固まりを見せて来た。
 そんな私の心に湧いたのは平穏…ではなく、退屈。

 人間と言うものは贅沢である。
 いや、主語を大きくすることで薄めようとしたが、私はとっても我儘で、かつ天邪鬼だ。
 
 二年生になった同月、刺激が減ってつまんなくなった我が人生、何か起きないかと「身投げ」した。
 「バーチャル配信者」の募集枠にメールを送り付けるという「身投げ」を。
 
 今までも何度かしてきた、考えずの行動。
 たまたま流れて来た記事を目にして、秒でリンクを踏んで、必要事項を記入して送り付けてやった。

 名前と連絡先さえ書いてあればどうにかなるだろう!
 個人情報以外の、応募理由とかは適当にポチポチして。
 とりあえず名前の所だけは、再確認しておこう。何度かテスト答案でやらかしているからね!

 「深山(みやま)いりか」
 うん。ちゃんと名前が打てている。偉い!

 理由は退屈、作戦は目隠し。
 
 考える時間をとれば、必ず「やめた!」するのはわかっている。
 だからこそ、さっさと入力を終え「えいやっ!」と身(メール)を投げたのだ。 

 通らずとも、リスクは無いのだ…!たぶん!
 そんないつもの「身投げ」は今回成功した。なぜなら通ってしまったのだから。
 
 私の欲しかった「喜び」と「興奮」を一時手にし、うまく出来るだろうか?という「不安」が襲いくる。
 後者の感情はいらないけど、死ぬほどは嫌いじゃない。
 退屈よりは全然よい。

 一瞬、後悔の味で吐き気をもよおすが、一週間もすれば旨味がわかる。だいたいいつもそうだから。

 

 
 
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