第13話

文字数 579文字

まだ目は醒めた。
ここは、どこだろう。
あ、猫に猿。
そうか、あの世。
「君たち、仕返しかい?好きにしたら良い」
ぷるるる…
あれ?言葉が、わかる。
かれは僕が連れてってくれてたら、と嘆いた。
鳩たちは、かれにたかるノミをついばむ為にむらがって来たそうだ。
他の猫なら逃げられただろうけど、のろいかれは、捕まった。
無数のくちばしでつつかれ傷つき、日毎弱って行ったそうだ。
キーキー
かれは僕が近づいて来なければ、と嘆いた。
みんなが嫌がる見張り役しか、群れに居場所がなかった、と。
他の猿なら軽々しく登った木の幹は、右手首がないかれには太過ぎて、踏ん張りきれなかった。
左手の生爪が剥げて、その痛みで枝を掴みそこねたそうだ。
うんうん、ごめんよ。
僕だって。
3人は、涙を浮かべながら、訴えた。
おれがなにをしたんだ?と。
死んで、良かった。
僕らはもう、きょうだいだ。
3人、晴れやかな気持ち。
ところで、ここは天国か地獄か?
生あたたかく、何も感じない。
腹も減らず、何の欲望もない。
ただ、3人、ここでときたま目を閉じてみたり。
眠たくもならなかった。
猫が言った。
「ここは天国だよ。なんの不安もないぷるるる」
猿も頷きながら、
「3人、安心してずっと過ごせるキーキー」
僕ひとり、何かに似ている、そう思ったが、不遇の生から開放されたかれらの安堵に、水を差したくなくて、
「うん、天国。きっとそうさ。」
そう言った。
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