第8話

文字数 396文字

悪酔い。
げろ、吐いちゃった。
一升瓶は空っぽ。
頭と、奥歯が痛い。
小便、小便、立ち上がると、くらくら足元がおぼつかない。
ちっとも晴れなかった。
酔えば酔うほどに、どんより曇るばかり。
「クソっ、珍しいだけじゃ、もの好きがたまに来て面白がるだけなんらよ!」
「何が亀甲石だ。亀なら手を出せ、足を出せ。こんちくしょう!」
八つ当たりに、蹴った。
すると、どうだろう。
にょっきりと、首が出て来たじゃないか。
大きな目玉をぱちくり。
確かに亀だ。
「俺を起こしたのは、お前か?」
一瞥するや、興味を失ったのか、むこうを向いて
にょっきり
にょっきり、
手足を出した。
ゆっくり、ゆっくり、林道を渡り、崖っぷちまで。
「山へ帰るなら、そっちじゃないぞ。」
しかし、亀は崖下に向かい、首と前脚を引っ込めて、後ろ脚だけで蹴って崖に飛び込んだ。
空中で後ろ脚と尻尾も引っ込めた亀は、もとの石の姿で勢い良く転がり出した。

まずい、下には村落がある。
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