第5話

文字数 770文字

湖をぐるりと回ると、彼女の家は本当にあった。
俺が辿り着いた場所からそう遠くはなく、丸太で出来た家に彼女は1人で住んでいた。


「さあ、こちらです。ゆっくりお過ごしください」
「わあ、思ったよりも広いんだな」
「ふふ。今、飲み物をお持ちしますね」
「ああ、ありがとう。頼むよ」


中に入ってみると驚いた。
丸太小屋にしては中が広かったからだ。

入口から日差しが良く入ってくるからだろうか。
ぽかぽかとしていて暖かくも感じられた。

薬草やら本やらがわんさかと、棚からこぼれるほどに置いてある。

木でできた丸いテーブルには、丸い透明の器に水を入れ、
その中に紫色の花が浮かべてあった。

これは…リンドウか?
たしか母親に頼まれて薬草を探しているときに見つけたような気がする。

薬草にしては可愛らしい見た目をしているから、きっと気に入って生けているのだろう。
壁には乾燥させた草花も吊るしてあり、薬草のほかにも花々が吊るしてあった。
不思議な女性ではあるが、可憐な一面が見れて少しほっとした。


上を見上げていると、彼女が戻ってきたのか声をかけられた。
視線を戻すと、2つの木の深皿を持った彼女が立っていた。

「お待たせいたしました。どうぞ」
「ありがとう。おいしそうだ」

あたたかなスープは、野菜や肉がふんだんに入っていて、とてもやさしい味がした。
日差しが出ているとはいえ、すっかり体が冷えていた俺は勢いよくスープを飲んだ。
舌がヤケドしたが、本当に美味かった。

「美味い!もう一杯いいかな」
「ええ。もちろん。おまちください」

まだ数口しか飲んでなさそうな彼女は目を丸くし、

手を口元に添えて微笑むと、俺の皿を受けて取るとお代わりを取りに行ってくれた。

少し照れくさかったが、この味をおかわりしないのはもったいなかった。

あと、微笑んだ彼女の顔はつい可愛かった。

あたたかいスープのせいか、心がぽかぽかした。

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