第4話

文字数 717文字

こんな森の奥に、人がなぜいる?
しかも若い女性が、こんな場所に恐らく1人で。なぜだろう。
咄嗟に構えた猟銃を慌てて下ろし、俺は話しかけてみた。

「こんにちは、お嬢さん。俺はこの国で猟師をしている者だ。咄嗟のことで猟銃を向けてしまって、悪かった。」
「…」
「この湖に竜が出ると王様から聞きつけてな。何か知らないかい?お嬢さん」
「あ…。いえ、存じません」
「そうか。驚かせてしまってすまなかったな。ここは危険だから、向こうへ行くといい。いつ竜が出るか分からないから」
「…はい」

俺よりも少し年下くらいの彼女は、物静かに俺の問いかけに応じた。

彼女は白いワンピースにこれまた同じような色合いの淡いクリーム色のエプロンを付けていた。

こんな軽装でどうしてこんな場所にいるのか疑問だが、竜のことを知らぬのなら深追いは不要だろう。

水でも汲みに来たのかもしれない。
猟銃を持った大男が話しかけても怖い思いをさせてしまうだけだ。

この調子だと、もう一晩ここで野宿かな。
そう思った時、「猟師さん」と声をかけられた。

「もし野宿をするようでしたら、近くに私の家がありますので泊まりになってはいかがでしょう」
「えっ!いいのかい?それは助かる。だが、お嬢さんのような若い女性の家に俺のような大男がいたら恐ろしいだろう」
「大丈夫ですよ。私こうみえて強いんですから」

そんな華奢な体で何を言うか…いや、きっと苦労して生きてきたのかもしれない。

こんな森の中で1人で暮らすのは大変だもんな。
そもそも、1人暮らしなのかな。
それも竜が住む湖の近くに。危ないのでは…。

何はともあれ、最近は夜風が寒かったので、俺にとってこの提案はとても有り難かった。

何か危険が迫った時は彼女を守らねば、そう思った。
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