第7話

文字数 437文字

木々に覆われた森をひたすら進むと、落ちていた枝がパキパキと鳴った。

そこらじゅうに枝は落ちていたが、何か違和感があった。

これは……俺のほかにも、足音がもうひとつある。

近くにいるのは俺だけじゃない。

喉をごくりと鳴らし、歩を進めていく。




水音が聞こえてきた。

小さな川がある場所に出た。

そこには自然に、息をのむほどに美しい、白く煌めく竜がいた。






でも、俺の背丈とそう変わらない大きさだった。

水を飲む竜は俺の視線に気が付くと、地を這うような声を挙げて空に飛び立ってしまった。

あまりに自然といるものだから、武器も出せなかった。

王から聞いていた話では、王宮ほどもある大きさのでかい湖竜であったはずだ。

あれは……もしや湖竜の子どもか?

俺はしばらく呆然と立ち尽くしてしまった。

だが、今日はこれ以降、湖竜が俺の前に現れることはなかった。




一瞬の対峙だったが、俺が立ち尽くしてしまったのには理由があった。

恐れなどという感情は不思議となく、ただ、美しかった。

あの瞬間、何か言いようのない感情になったのだ。
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