【ユーザー参加企画★リレー小説】イブに初デートしたらヤバい世界に飛ばされた件
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文字数 1,449文字
【フェン01】たけうちりうとの続き・米洗ミノル
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白いフェレットは、わたしから離れて男の子の腕に絡みついた。
にゅーん、にゅーんと伸びて……
伸びて、の、伸び……
え? 伸びすぎじゃない??
フェレットは伸びに伸びて、男の子の左腕にぐるぐると巻きついていく。背中のほうへと回って――右肩からちょこんと顔を出した。
「きゅう!」
「な、なに、その子……?」
「なにって――」
「君と同じさ、こいつは僕の【ペルトガ】。君ほど有能じゃないけどね」
「は、はい?」
「だから、生体端末。モバイル式の。フェレット型の」
「せいたい……うん? 生きてるの? 機械なの?」
「生きてる、機械だけど……」
当たり前じゃないか、というように首をかしげる、ぽやんとした雰囲気の男の子。
それでもどうやらわたしのことを怪訝に思っているようで。
ま、まあ、こんな格好だから仕方がないけども。
「――あの、わたしと同じって」
「……君も【ペルトガ】だよね。しゃべれるし思考できる最新式の――そこまでの変身が出来るだなんて、初めて見たけど」
「…………」
どうやらわたしの「変身!」も目撃されていたらしい。
指輪から人間への変身――しかもサンタのビキニ――を見ても騒がない彼はどうやら、わたしをその【ペルトガ】とやらだと思い込んでいるようだ。
もちろんわたしは、そんな生体端末だとかコンピューターだとかではない。正真正銘、れっきとした指輪だ。ただし、ほんのすこしだけ不思議な指輪であることは間違いないけれど。
どうしよう……。
このまま彼に話を合わせておくべきだろうか。彼はわたしのことを怪訝には思っていても、危害を加えてきそうな様子はないし……。
うん。そうしよう。話を合わせておこう。わたしは【ペルトガ】。生体端末。人型の――ってことで。
実のところ――
わたしには、そうするしかない理由があった。
なぜだか、『変身』ができないのだ。さっきから試しているのに、変身できない。指輪にも戻れないし、他の姿にもなれなかった。
こんなことは初めてだ。オオカミに変身するつもりが人間になっちゃって、しかもサンタビキニで。
これは非常にまずい。このどこだかわからない街で、ひとりで、はぐれたギンを探さなきゃいけない。
……ついでに言うと、時代もわからない。
生体端末だとか言っているけれど、向こうに見える町並みには石造りの建物が並んでいるし、ここは森の近くの、舗装もされていない小道だし。
今は『いつ』なんだろうか――過去? 未来? それとも??
となると、まずは状況を把握することが第一だ。彼から話を聞いて、今の状況を確認することから始めよう。それからどうやってギンと合流するかを考える。
……ギン、オオカミに食べられてないといいけど――。
「な、なに?」
気づくと、彼の視線がわたしに注がれていた。
……ビキニ姿のわたしに。
うーん、ぽやぽやしてるけど、思春期なのね。
このオオカミめ。
わたしが両腕で胸をかばうと……彼が、ぽつりと言った。
「――寒くない?」
「さ、寒いです……」
ヒト型に変身すると、感覚までも人間と一緒になるようで、わたしは青ざめてカタカタと震えていた。
もとの姿に戻れないの、つらい。うう……。
その名前も知らない男の子は、わたしにコートを貸して、とりあえずということで、彼の部屋まで案内してくれた。紳士か。
……わたし、お持ち帰りされてない??
※アイコンは、藤沢チヒロ先生の挿絵からお借りしました。
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