０３

「か～ご～め　　カゴーノェ」

「カゴーノ　　ナーカノ　　トリーハ」

「イツー　イツー　デーアーウー」

「ヨアケノ　バンニー」

「ツールト　カーメガ　デーアッタ」

「ウシロノショウメン　ダーレ」

不可思議(ふかしぎ)で不気味(ぶきみ)な唄声(うたごえ)だ。

かご女、籠女(かごめ)？

普通に考えれば籠(かご)の中の鳥だが、
それもかごが加護(かご)でとりが鳥居(とりい)だとするなら、
加護(かご)の中の鳥居(とりい)になる。

そう考えた途端(とたん)に、
神社の鳥居が目の前に現れた。

鶴(つる)と亀(かめ)の像を称(たた)えたその鳥居(とりい)を、
その門をくぐった。

神社の奥にかごめ唄(うた)が続いて聴(き)こえてきた。

「い～つ　い～つ　で～やぁ～うぅ」

無邪気(むじゃき)な童(わらべ)の唄と言うには、
あまりに不吉(ふきつ)なその歌詞の意味を考える。

伍伍(いついつ)で殺(や)る。
五(いつ)つ刻(どき)で殺る？

または伍(いっ)する＝同等の位置(いち)に並ぶ。

五つ刻に殺る。

または、逸(いつ)か？

逸(いつ)＝ルートから出て横にそれる。
するりと抜けさる。
記録からもれる。
世の中の理(ことわり)から外れる。
枠(わく)を越える。

逸(いつ)、逸(いつ)で殺(や)る。

または出やる。

出やる＝既(すで)に出ている。

そんな事を考えていると、
目の前に禁足地(きんそくち)の看板(かんばん)が見えた。

禁足地と書かれたその下に、侵入禁止の文字。

しめ縄(なわ)で封鎖(ふうさ)されたその中から、
童(わらべ)の唄声がしていた。

禁足地(きんそくち)！
それは、立ち入り禁止の聖域(せいいき)。

その理由は、大きくわけて２つに別れる。

１つは危険な為(ため)と言う理由と、
神聖な聖域(せいいき)の為と言う理由の２つに。

例(たと)えば有名な禁足地に、
八幡(やわた)のやぶ知らずなどがあるが。

そこも、
入ると二度と出て来られないと伝(つた)えられる、
禁足地(きんそくち)の１つである。

だが時代の風化と共にその理由は忘れさられ、
風習だけが残されていた。

こういった現象を昔の人は、
神隠(きみかく)しと呼んで恐れていた。

年間行方不明者(ゆくえふめいしゃ)数、約８万人。

俺は風化(ふうか)して黒ずんだその看板(かんばん)を見つめ、
鳥居も神域(しんいき)への入り口なのを思い出していた。