第10話 第三の殺人
文字数 1,334文字
ミステリー研究会の部室に向かうと、既に警察が捜査を始めていた。
式は近くにいた刑事に事情を説明し、捜査に加わった。
「第一発見者って誰なんですか?」
「ああ、ミステリー研究会の顧問である佐倉先生だ」
刑事が目を向けた先には、式たちもよく知っている佐倉司の姿があった。
彼女は式たちのクラスの担任で、ミステリー研究会の顧問でもある。かつて起きた灯篭館殺人事件も経験していた。
「佐倉先生が第一発見者なんですか?」
事情聴取を受けていた佐倉に、式は話しかけた。
「式くん、榊さん。あなたたちも来たのね」
「はい。隼人さんに調査を手伝ってほしいと頼まれて」
「そう。式くんがいると心強いわね」
佐倉は式たちと共に灯篭館で起きた殺人事件を経験している。そのため式の推理力に関しても当然知っているはずだ。
「佐倉先生が遺体を発見したのはいつ頃ですか?」
「十二時過ぎくらいかしらね。ミステリー研究会の部室に忘れ物をしたのに気付いて、それを取りにここに来たら……」
「なるほど。当時の状況を覚えている限りで話してください」
「そうねえ……」
佐倉は必死に頭を回して思い出す。
「まず、ドアには鍵がかかっていたわ。だから私が持っている部室の鍵を使ってドアを開けたら、机の上に血まみれで倒れている吉野さんを見つけたの。一応脈を測ってみたけど、そのときには既に息絶えていたわね。だから学校で調査している刑事さんたちを呼んだの」
「ドアには鍵がかかっていたみたいですが、窓はどうでした?」
「窓にも鍵がかかっていたわ」
佐倉が頭を唸らせながら答える。
「なるほど。ということはこの部屋は密室だったってことになりますね」
「そうね」
式は吉野の遺体を確認する。
遺体は机の上に仰向けで倒れていた。
胸には刃物らしきもので刺された跡がある。近くにいた刑事に確認したところ、死因はこの傷痕で間違いないようだ。かなり深くまで刺さっており、即死に近いとされている。
制服は血まみれになっているものの、他には目立つ外傷はなかった。
次に式は部室の中を見渡した。
部室の広さは教室と変わらない。部室にあるのは本棚、机、椅子くらいだ。本棚には推理小説やミステリーに関する本などが収納されている。
これらについて、特に不審な点は見当たらない。
「刑事さん。何か死体の周りに落ちていたものとかありませんか?」
「そういえば、これが落ちていました」
刑事が取りだしたのは書類などを束ねるダブルクリップだ。
このダブルクリップには紐のようなものが絡まっている。
「これ、どこに落ちていましたか?」
「ドアのすぐ近くです」
「そうですか」
式は部室のドアを確認してみた。
一見特に変わったところはなさそうに見える。しかしよく観察してみると、鍵のつまみ部分に擦れたような跡があることに気付いた。
「佐倉先生、この擦れって以前にもありましたっけ」
「うーん、そこまではわからないわ。ただ、その擦れって経年劣化とかでついたものにしては目立つ感じがするわね」
佐倉の感想に、式も同感だった。
だとすると、誰がどういう意図でこの擦れを作ったのか。
式は近くにいた刑事に事情を説明し、捜査に加わった。
「第一発見者って誰なんですか?」
「ああ、ミステリー研究会の顧問である佐倉先生だ」
刑事が目を向けた先には、式たちもよく知っている佐倉司の姿があった。
彼女は式たちのクラスの担任で、ミステリー研究会の顧問でもある。かつて起きた灯篭館殺人事件も経験していた。
「佐倉先生が第一発見者なんですか?」
事情聴取を受けていた佐倉に、式は話しかけた。
「式くん、榊さん。あなたたちも来たのね」
「はい。隼人さんに調査を手伝ってほしいと頼まれて」
「そう。式くんがいると心強いわね」
佐倉は式たちと共に灯篭館で起きた殺人事件を経験している。そのため式の推理力に関しても当然知っているはずだ。
「佐倉先生が遺体を発見したのはいつ頃ですか?」
「十二時過ぎくらいかしらね。ミステリー研究会の部室に忘れ物をしたのに気付いて、それを取りにここに来たら……」
「なるほど。当時の状況を覚えている限りで話してください」
「そうねえ……」
佐倉は必死に頭を回して思い出す。
「まず、ドアには鍵がかかっていたわ。だから私が持っている部室の鍵を使ってドアを開けたら、机の上に血まみれで倒れている吉野さんを見つけたの。一応脈を測ってみたけど、そのときには既に息絶えていたわね。だから学校で調査している刑事さんたちを呼んだの」
「ドアには鍵がかかっていたみたいですが、窓はどうでした?」
「窓にも鍵がかかっていたわ」
佐倉が頭を唸らせながら答える。
「なるほど。ということはこの部屋は密室だったってことになりますね」
「そうね」
式は吉野の遺体を確認する。
遺体は机の上に仰向けで倒れていた。
胸には刃物らしきもので刺された跡がある。近くにいた刑事に確認したところ、死因はこの傷痕で間違いないようだ。かなり深くまで刺さっており、即死に近いとされている。
制服は血まみれになっているものの、他には目立つ外傷はなかった。
次に式は部室の中を見渡した。
部室の広さは教室と変わらない。部室にあるのは本棚、机、椅子くらいだ。本棚には推理小説やミステリーに関する本などが収納されている。
これらについて、特に不審な点は見当たらない。
「刑事さん。何か死体の周りに落ちていたものとかありませんか?」
「そういえば、これが落ちていました」
刑事が取りだしたのは書類などを束ねるダブルクリップだ。
このダブルクリップには紐のようなものが絡まっている。
「これ、どこに落ちていましたか?」
「ドアのすぐ近くです」
「そうですか」
式は部室のドアを確認してみた。
一見特に変わったところはなさそうに見える。しかしよく観察してみると、鍵のつまみ部分に擦れたような跡があることに気付いた。
「佐倉先生、この擦れって以前にもありましたっけ」
「うーん、そこまではわからないわ。ただ、その擦れって経年劣化とかでついたものにしては目立つ感じがするわね」
佐倉の感想に、式も同感だった。
だとすると、誰がどういう意図でこの擦れを作ったのか。