第1話 最後の高校生活

文字数 656文字

 木漏れ日が射す放課後の教室。
 日が暮れるのも少しずつ遅くなり、ようやく春を迎えようとしている。
 もうすぐ、卒業だ。
 教室に集まった七人の生徒は、三年間の高校生活を思い返していた。

「もうすぐ卒業か……」
「寂しいもんだな」
「私……皆と離れるの嫌だよ」
「別に一生会えないわけじゃないんだし、これからも一緒に遊ぼうよ」
「そうよ、やろうと思えばいつでも会えるでしょ」
「ああ。どんなことがあっても、俺たちの友情は決して崩れたりはしない」
「そうだよね。私たち、ずっと一緒だよね」

 彼らは、卒業する悲しみを振り払うかのように励ましあった。
 だが、一人の女子生徒が呟いた一言で、その空気も崩れてしまった。

「でも、やっぱり皆と離れたくないよ。……いつまでもこの高校生活が続いてくれたらいいのに」
「……」

 悲しげに呟く少女に、誰一人言葉をかける者はいなかった。
 結局そのまま、七人は下校した。
 皆と別れるとき、突然一人の男子生徒が声を大きくして、

「……よし、これから卒業まで、皆で高校生活最後の思い出を作ろう。永遠に心に残るような、最高の思い出を!」

 と言った。
 その言葉に、最初は全員顔を見合わせていたが、

「……そうだな! いろんなことをしようぜ!!」
「うんうん! じゃあ今度の休みに皆でどこかに行こうよ」
「いいわね。賛成よ」

 と全員が同意した。
 その様子は、傍から見ても楽しそうな学生の集団に見えただろう。
 事実、本人たちも楽しんでいた。
 ただ一人を除いて。
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