第15話 最終調査
文字数 1,826文字
取り調べの光景を録画したビデオを受け取った式は、視聴覚室でそれを見ることにした。
今回は前回とは異なり、事件の詳細については知らされていない。被害者である水瀬と吉野が殺害された、という事実だけを伝えてある。
一人目は瀬尾高広だ。
「今度はあの二人が……。くそっ、どうしてこんなことに」
「瀬尾さん、取り調べが終わってから十二時までの間、何をしていたかを聞かせてもらえないでしょうか」
「取り調べ後もまだ学校に残ってくれと言われていたから、ずっと学校に残ってましたよ。やることがなくて暇だったんで、部室に行って本を読んでました」
瀬尾は元文芸部所属であったため、おそらく文芸部の部室にいたのだろう。
「それを証明する人は?」
「いるわけないでしょう。この学校には俺たち以外の生徒はいないんだし。先生たちはいろいろと忙しそうで皆職員室にいたらしいし、刑事さんたちは事件の調査で現場とかを調べてた。その間俺はずっと一人でしたよ」
「事件発生時刻の前後、誰か怪しい人は見ませんでしたか?」
「怪しい人か、特に見なかったですね」
次に呼び出されたのは福村優香だ。
「はい、大丈夫です。少し落ち着きました。何でも聞いて下さい」
「福村さん、取り調べが終わってから十二時までの間、何をしていたかを聞かせてもらえないでしょうか」
「取り調べが終わったすぐ後は、お手洗いに行ってずっと泣いてました。その後、全員の取り調べが終わった後に聖奈に会って、少しだけ会話しました」
被害者である水瀬と会話をしていた。この事実は何かしらの助力になるかもしれない。
「その時何を話しました?」
「健ちゃんの事件について話してました。何で殺されちゃったんだろうとか、犯人は誰なんだろうとか。そしたら聖奈は、『大丈夫、すぐに解決するよ』って言って私を励ましてくれたんです」
「その会話後は何を?」
「軽音楽部の部室に行ってました。今でも健ちゃんが死んじゃったのが信じられなくて。現場を見張ってた刑事さんがいたので、その人に聞けば私がいたことは分かると思います」
その次に呼び出されたのは真中慎吾だった。
「また殺人が起きたって聞きました。犯人は一体誰なんです!?」
「それを突き止めるために、こうして取り調べをしているんです。取り調べが終わってから十二時までの間、何をしていたかを聞かせてもらえないでしょうか」
「ずっとこの学校で待ってましたよ。暇だったから教室でずっと寝てました」
「それを証明する人は……」
「いると思いますか? 誰かの傍で寝るなんて恥ずかしいことしませんよ」
真中は不貞腐れながら答える。
「では、ここに呼ばれるまでずっと眠っていたと?」
「はい。まあ怪しまれるのは仕方ないですけど、俺が犯人だというなら証拠とかをもってきてほしいですね。それこそ、こうすれば殺人が可能だ、なんて曖昧なものじゃなくてね」
真中は皮肉を言うように語る。
最後に呼ばれたのは遠野菜々美だ。
「そうですか、聖奈と貴子が……」
「お気持ちを察します。それで取り調べが終わってから十二時までの間、何をしていたかを聞かせてもらえないでしょうか」
「特にやることもなかったので、剣道場に行って剣を振っていました。少しでも体を動かしておいた方がいいかなって」
「ここに来るまでの間ずっとですか?」
「はい。一人でやっていたので、証人とかはいませんが」
確かに彼女の体からは汗が流れていた。少なくとも運動をしていた証拠にはなるだろう。
「この取り調べ、私で最後ですよね。犯人の見当はつきました?」
「……ええ。これから情報をまとめるつもりです」
「そうですか。殺人なんて異常なことをした犯人を早く捕まえてほしいです」
これで取り調べは終了だ。
「……」
録画を見終わった式は、榊と隼人にそれぞれ連絡を取った。
「榊さん、どうだった?」
「バッチリです」
「そっか。隼人さんの方はどうですか?」
「こちらも全て終わった」
隼人は式に頼まれていたことを話した。
「わかりました。それではどこか適当な空き教室にあの人を呼び出してくれませんか?」
「犯人一人だけでいいのかい?」
「ええ。そっちの方がいろいろと話しやすいと思いますので」
「わかった」
通話を終え、電源を切った。
「さて、俺も向かうか」
犯人の元へ、式は向かった。
今回は前回とは異なり、事件の詳細については知らされていない。被害者である水瀬と吉野が殺害された、という事実だけを伝えてある。
一人目は瀬尾高広だ。
「今度はあの二人が……。くそっ、どうしてこんなことに」
「瀬尾さん、取り調べが終わってから十二時までの間、何をしていたかを聞かせてもらえないでしょうか」
「取り調べ後もまだ学校に残ってくれと言われていたから、ずっと学校に残ってましたよ。やることがなくて暇だったんで、部室に行って本を読んでました」
瀬尾は元文芸部所属であったため、おそらく文芸部の部室にいたのだろう。
「それを証明する人は?」
「いるわけないでしょう。この学校には俺たち以外の生徒はいないんだし。先生たちはいろいろと忙しそうで皆職員室にいたらしいし、刑事さんたちは事件の調査で現場とかを調べてた。その間俺はずっと一人でしたよ」
「事件発生時刻の前後、誰か怪しい人は見ませんでしたか?」
「怪しい人か、特に見なかったですね」
次に呼び出されたのは福村優香だ。
「はい、大丈夫です。少し落ち着きました。何でも聞いて下さい」
「福村さん、取り調べが終わってから十二時までの間、何をしていたかを聞かせてもらえないでしょうか」
「取り調べが終わったすぐ後は、お手洗いに行ってずっと泣いてました。その後、全員の取り調べが終わった後に聖奈に会って、少しだけ会話しました」
被害者である水瀬と会話をしていた。この事実は何かしらの助力になるかもしれない。
「その時何を話しました?」
「健ちゃんの事件について話してました。何で殺されちゃったんだろうとか、犯人は誰なんだろうとか。そしたら聖奈は、『大丈夫、すぐに解決するよ』って言って私を励ましてくれたんです」
「その会話後は何を?」
「軽音楽部の部室に行ってました。今でも健ちゃんが死んじゃったのが信じられなくて。現場を見張ってた刑事さんがいたので、その人に聞けば私がいたことは分かると思います」
その次に呼び出されたのは真中慎吾だった。
「また殺人が起きたって聞きました。犯人は一体誰なんです!?」
「それを突き止めるために、こうして取り調べをしているんです。取り調べが終わってから十二時までの間、何をしていたかを聞かせてもらえないでしょうか」
「ずっとこの学校で待ってましたよ。暇だったから教室でずっと寝てました」
「それを証明する人は……」
「いると思いますか? 誰かの傍で寝るなんて恥ずかしいことしませんよ」
真中は不貞腐れながら答える。
「では、ここに呼ばれるまでずっと眠っていたと?」
「はい。まあ怪しまれるのは仕方ないですけど、俺が犯人だというなら証拠とかをもってきてほしいですね。それこそ、こうすれば殺人が可能だ、なんて曖昧なものじゃなくてね」
真中は皮肉を言うように語る。
最後に呼ばれたのは遠野菜々美だ。
「そうですか、聖奈と貴子が……」
「お気持ちを察します。それで取り調べが終わってから十二時までの間、何をしていたかを聞かせてもらえないでしょうか」
「特にやることもなかったので、剣道場に行って剣を振っていました。少しでも体を動かしておいた方がいいかなって」
「ここに来るまでの間ずっとですか?」
「はい。一人でやっていたので、証人とかはいませんが」
確かに彼女の体からは汗が流れていた。少なくとも運動をしていた証拠にはなるだろう。
「この取り調べ、私で最後ですよね。犯人の見当はつきました?」
「……ええ。これから情報をまとめるつもりです」
「そうですか。殺人なんて異常なことをした犯人を早く捕まえてほしいです」
これで取り調べは終了だ。
「……」
録画を見終わった式は、榊と隼人にそれぞれ連絡を取った。
「榊さん、どうだった?」
「バッチリです」
「そっか。隼人さんの方はどうですか?」
「こちらも全て終わった」
隼人は式に頼まれていたことを話した。
「わかりました。それではどこか適当な空き教室にあの人を呼び出してくれませんか?」
「犯人一人だけでいいのかい?」
「ええ。そっちの方がいろいろと話しやすいと思いますので」
「わかった」
通話を終え、電源を切った。
「さて、俺も向かうか」
犯人の元へ、式は向かった。