第9話

文字数 1,255文字

実際、行ってみる
僕は状況を整理しようと思い、切り株に腰を下ろす。さて、一体どうしたもの
か。と考えていたら、急に胸ポケットが何かが動いた。ふと見ると妖精が目を
覚ましている。ああ、そういえば助けるに必死で胸ポケットに妖精を入ってい
る事をすっかり忘れていた。
「ああ、気づいたんだね。」
「な・・・なぜ人間がいる!!」
「安心しろ、エマ。この人間はカイと言って私を助けてくれたのだ。」
「そうでしたか。女王様がそうおっしゃるのであれば。」
そう言って僕のポケットから出る。
「カイ、エマだ。私の側近をしている。」
「それどころではありません。陛下が下見に行ったすぐに何者かによって何者
かによって仲間が連れ去られてしまいました。真に申し訳ありません。なんて
お詫びをすればよいのか。」
「エマは悪くない。無論カイもだ。」
僕はドキリとした。心が読まれたのかと思った。
「どうせ、昨日、僕が止めていなければ・・・などと考えていたのだろうがそ
れは見当違いというものだ。私が国の中で一番飛ぶのが速い。だから私が言っ
たのだが、考えが甘かった。私には仲間を助ける義務がある。エマは我々をさ
らって行った奴の顔を見たか?」
「はい。人かどうかはわかりませんが、人の形をしていました。髪の毛は長く
て女のよう。これは私の推測になりますが、また近いうちに来るつもりで我々
を捕まえていたのではないかと。」
「さすがだな。エマ。さて、カイ。町がクモの巣だらけになっていると言う話
だったが心当たりはないか?」
僕はじいちゃんが言っていたボロボロの空き家を思い出す。あそこの家はなん
だかただならぬ感じがする。
「町の外れにある空き家に今にも壊れそうな空き家があって、誰もいないはず
なのに変な気配を感じるんだ。夜中に大量のクモを見たって言う人もいるし。」
「今、大量のクモと言ったか?」エマが慌てた様子で聞いてきた。
「うん、言った。それに気持ち悪いくらいクモの巣があるし。」
エマは何か考えている様子だ。ブツブツと何かをつぶやいている。
「人間!よく聞きなさい。クモは基本的に単独行動をする。夜中の町に集団で
動くなんておかしい。何者かによって操られている可能性が高い。何者かが町
の空き家をアジトにして雲を操り私たちを捕えようとしている事が考えられ
る。カイ、空き家の場所はわかるか?」
「一度見に行ったことあるからわかるよ。」
「わかった。敵は人の可能性があることも考えて私とカイで行こう。」
エマが町に出かける気満々でいると「待って。」と声がかかる。
「私が行く。元はと言えば私が行くと言い出したのが軽率だった。ここは私が
行く。」
「ですが・・・陛下。」
「心配はいらない。カイがいるから大丈夫だ。それよりエマには皆の手当のを
頼みたい。」
「承知いたしました。」
「ここは大丈夫なの?」僕は心配になって聞いた。
「今は曇っているから森が暗い。普段は安全な場所でも危険になる。特に人間
にはな。命知らずのやることだ。」
「行ってくる。」
「行ってきます。」
「いってらっしゃいませ。くれぐれもお気をつけ下さい。」
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登場人物紹介

カイ

日本のごく普通の大学生。イギリス人の祖父母を持つクオーターであり、そのためか少し見た目を気にしている。大学の長い夏休みを利用して祖父母が住むイギリスの田舎町に遊びに行く。田舎町では子どもが少ないから可愛がられている。とあることがきっかけで妖精と出会う。

ファタ

妖精の国の女王である。気が強い。人間であるカイと出会い行動をともにする。人間が嫌いだが、カイのことは信頼している。カイからもらったグラノーラが大好物。

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