第6話

文字数 902文字

到着そして問題
「ええ、今聞きたいのか?」
「うん、今聞きたい。君達の所にいくなら尚更知っておく必要がある。」
「一理ある。私たちは昔人々と『よき隣人』『よき人々』だった。我々は楽器
が得意だからな。誤って国に来た人間達に笛を教えてやったこともある。がい
きなり人間達は木を切り、訳がわからない煙がモクモクと立つ巨大な建物を作
り始めた。我々は行き場がなくなり、森の奥に追いやられたのだ。ずっと目の
話だがな。」
「産業革命のことかな。」
「知らないが我々が代々語り継いでいる話らしい。だから我々は人間が嫌いな
のだ。」
それにしても一時間強歩いているが、さっきからずっと景色が変わっていな
い気がする。それなのにファタは迷わず飛んでいる。どういうことなんだろう?
「さっきから同じ所をぐるぐると廻っているように見える。」
「妖精にしか見えない印があるのだ。決して同じ所ではない。」
言われてみればクモの巣の位置がさっきとは違う気がする。それになんだがク
モの巣の数がさっきより増えている気がする。クモの数も多くなっているよう
な。僕の気のせいだと信じたい。
「それにだ、人間がそうホイホイと現れては困る。それにカイが思っているよ
り町より遙かに離れている。」
「一時間ぐらいしか歩いてないのに!?」僕はすごく驚いた。
「時間というのは気まぐれなのだ。」
「カイ、もうそろそろだ。」ファタが嬉しそうに言う。
クモの巣が増えてたのは気のせいではなかった。国に近づくにつれクモの巣は
増えていき、今はナイフでブチブチと切らないと先に進めない。
「ファタ、いつもこうなの?」
「いや、なんだか様子がおかしい。」
「ファタ、僕のポケットに入って!居心地は悪いかもしれないけど。」
「そんな必要ない。」
「あるから言ってるんだ。こんなにクモの巣があるといつ引っかかるかわから
ない。クモの巣処理が出来る僕が行くべきだ。」
本当は今も体中にクモの巣がひっついていてすごく気持ちが悪い。ファタの方
が大変だし。なんかあったときに僕はファタを守るべきだ。
「不本意だが仕方がない。」
ファタは素直に僕の胸ポケットに入ってくれた。歩いていると奥の方に泉らし
きものが見える。
「あそこが国だ。」


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登場人物紹介

カイ

日本のごく普通の大学生。イギリス人の祖父母を持つクオーターであり、そのためか少し見た目を気にしている。大学の長い夏休みを利用して祖父母が住むイギリスの田舎町に遊びに行く。田舎町では子どもが少ないから可愛がられている。とあることがきっかけで妖精と出会う。

ファタ

妖精の国の女王である。気が強い。人間であるカイと出会い行動をともにする。人間が嫌いだが、カイのことは信頼している。カイからもらったグラノーラが大好物。

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