第10話

文字数 970文字

中では・・・
僕とファタ葉妖精の国を出る。
「どうやって戻るの?」僕は前を飛んでいるファタに聞く。
「人間が国に行くのは確かに至難の業だ。しかし妖精が人間の町や村に行くの
はたやすい。行く必要がないから行かないだけだ。もうすぐ着くぞ。」
「ええ!もう着くの!!」
行くのは1 時間弱かかったのにまだ三十分も経っていない。
「言ったではないか妖精が人間の町に行くなど簡単だと。」
森が開ける。そこには僕が滞在している町が広がっている。
「森は味方にもなるし敵にもなる。カイ、例の家はどこだ?案内を頼みたい。」
「ここからすぐだよ。まっすぐ行って突き当たり。」
先に進むにつれ町のあちらこちらに沸くようにクモが出てくる。なんとも言え
ない異様な雰囲気があってとてもおどろおどろしい。
二キロメートル歩いたところに僕たちの目の前にいつ倒れてもおかしくない
ようなボロボロの家が建っている。家と言うよりも小屋と言った方がしっくり
くる。そんな家だ。
「確かに怪しい。何も知らずに入るのはあまりにも無謀だ。これだけボロボロ
なのだ。どこかに穴でも開いていたらいいのだが。」
「ファタ、ここからなら中を覗けそうだよ。」
僕は天井と小屋との間に開いた小さな穴を見つけた。僕は絶対に無理だが、フ
ァタならいける。ファタは早速、穴に飛んでいき覗く。ファタ様子がミルミル
変わっていく。肩がワナワナと震えている。中で何かあったに違いない。
「断じて許さない。あいつらに然るべき報いを。」
「ファタ一体どうしたの?」
「どうしたもこうしてもない。皆、鳥かごの中に捕まっている。ぐったりして
いる。ろくにご飯を食べていないのだろう。」
「敵は?」
「人間の形をしているがおそらく人間ではない何かだ。女の格好をしている。
銀髪。数え切れないくらいクモがいる。」
「僕に考えがある。上手くいくかわからないけど。やらないよりましだ。」
「どうするのだ?」
僕はスマートフォンを取り出し、とある所に電話をかける。相手は中々電話に
出てくれない。日本だったら出てくれるのに・・・。諦めようかと思ったその
瞬間ようやく出てくれた。僕は手短に要件を伝える。不安は残るが・・・。
「カイ、まだか?」
「後もう少し待って。」
そう言いながら僕はスマートフォンのタイマー機能を使い十分後にとある音が
出るように設定しておく。
「ファタ、お待たせ。行きますか。」
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登場人物紹介

カイ

日本のごく普通の大学生。イギリス人の祖父母を持つクオーターであり、そのためか少し見た目を気にしている。大学の長い夏休みを利用して祖父母が住むイギリスの田舎町に遊びに行く。田舎町では子どもが少ないから可愛がられている。とあることがきっかけで妖精と出会う。

ファタ

妖精の国の女王である。気が強い。人間であるカイと出会い行動をともにする。人間が嫌いだが、カイのことは信頼している。カイからもらったグラノーラが大好物。

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