第2話  2024年。日比谷、銀座

文字数 1,018文字

 亮太は二十歳になった。
 以前からの約束で、姉はお祝いにお酒を奢った。

 姉は有名なファッションブランドの副社長でモデルでもあり、熱烈なファンがいた。

 最初は日比谷公園で開催中のオクトーバーフェストのドイツの生ビールだった。

 二人は巨大なグラスに注がれた生ビールで乾杯した。

 姉「おめでとう」

 亮太は照れながら、生ビールのグラスを上げて「ありがとう」と答えた。

 亮太「 姉さんには高校生の頃、良くいろんな所に連れて行ってもらったね。特に青山とか銀座が大好きだったよね」

 姉 「そうね! あの頃は私にカッコいい恋人ができたって、ちょっとした話題になったのよ。」

 姉は悪戯っぽい笑みを浮かべた。モデルのように可愛らしく笑った。モデルだった。

 亮太はドキドキした。

「えっ。そんな話があったの?…

 そういえば、なんで姉さんのお店は新宿にあるの?」

 姉は亮太がわざと話題を変えたのに気付いたので、少し笑ってから答えた。
「わたしのリアル店舗を新宿ラナノに作ったのは、ターゲットとする購入年齢層が若い子達だから。亮太も銀座より新宿のほうが行きやすいでしょ」

 二人はでかいソーセージとかをお腹一杯になるまで食べて、ブラブラと銀座四丁目まで歩いた。
 姉は次に亮太をバーウラグルに案内した。そのバーはウラグルビルの最上階にあった。
 エレベーターから降りるともうバーの店内で、ソファ席とカウンター席があり、姉はバーテンに何か言ってカウンター席に座った。

 姉「アイラ島のシングルモルトが美味しいのよ」

 亮太はスレンダーな姉の美しい脚をちらっと見た。身にまとっているのは姉のブランドのミニワンピとアクセだ。姉のXのフォロワーは30万人を超えている。

 亮太はバーテンの方に言った。

「先ほど姉の申し上げたのをお願いします」

 姉は知り合いのバーテンに
「この間飲んだ、チョコレートの味のする、ジンベースのカクテルを下さい」と言った。

 結局、亮太はその日ぐでんぐでんになるまで飲んだ。

 そして、次の日。
 亮太の顔色は真っ青だった。

「気持ち悪い…」

 薬をスマホで検索したら、速報が目に入って来た。「誰にでも効くお酒の薬、実用化に目処(めど)!アセトアルデヒド脱水素酵素補酵素がアセトアルデヒドを速やかに炭酸ガスと水に分解…」

 亮太「は、早く、その薬をくれ…」


 その薬が発売されたのはそれから5年後のことだった。

 これにより人類は、いくらお酒を飲んでもその害からフリーになった。
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