第5話  2044年夏、国会前

文字数 463文字

 亮太は姉と国会前にいた。

「国民に酒を飲む自由を!」

 二人はプラカードを掲げ、警官隊ともみ合う。

 姉はスレンダーで美しいままであった。しかし、実業で得たお金の全部を新規の醸造会社立ち上げに使い切っていた。

 今日では世界中の醸造会社が潰れかけていて、姉の零細な会社はとっくに潰れていた。

 10年ほど前から徐々に、5年ほど前から加速度的に、酒のせいで病気になった、酒のせいで死亡したという訴訟が世界中で起きた。被告の醸造会社、販売会社、広告企業は最高裁で負けて、莫大な賠償金を背負った。その金額は1000兆円以上と言われる。
 姉は投資する所と時期を完全に誤ったのだ。

 姉は亮太の顔色を読んで、「私は全然後悔なんかしてない。」
 と、片手を腰にあてて、轟然と顎を上げ言い放った。

 亮太「でも、姉さんにあの論文を見せなきゃよかったと思うよ。まさかあの論文を読んで害のないお酒を作ろうと言い出すなんて思いもしなかった」

 姉 「何言ってんの。あんたのおかげで私は好きに生きられて幸せよ。とにかく、私の酒に害がないことを役人共にわからないと」
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